喧嘩と涙

次の日の朝。

「結子、こっちに来なさい」

鬼のような顔をした親が部屋に入り呼び出される。


―バレてしまったんだ。


畳の部屋に座布団なしで正座させられ、怯えている。

「…この『かなた』って人は誰なのか説明しなさい」

恋人なんて言えない。怖い。でも隠すのは余計にリスクが高くなる。

だから、言うしかない。


「…ネットで知り合った、恋人です」


もちろん親は激怒した。

「あれだけ言ったのに約束破るなんて許しませんからね!」

スマホを床に叩きつけ、粉々にひび割れた画面。

ガラスフィルムを貫通しているほどの割れ方だろう。


結子は泣きながら親に反論する。

「なんで今の時代のネット事情を否定するわけ?今どきはネットからでも実際の恋愛に発展することもあるのに昭和の考えを押し付けないで!」

涙が溢れる。

だが親は頑なにネット恋愛を否定する。

「はい、スマホ解約ね」


これが結子の中での【求めてる愛され方】がさらに歪み始める火種となってしまった。


スマホは解約されてしまったものの、バイト代を貯めて買ったプライベートのパソコンがある。

さすがにそこまでは干渉しないと信じたい。

SNSを開きすぐにかなたに連絡する。


『昨日はごめん…あとスマホ解約させられちゃった』

だが、返信は来なかった。

あれだけ愛してくれると言ったのに。うそつき。

さらに涙が溢れる。

もう…終わりなんだ、と思ったら通知が来ていた


『ごめん、僕も寝落ちして今さっきまで寝てた』

『よかった…裏切られたかと思ったよ』

一連のメッセージを見たかなたは

『よかったら…僕の家に逃げに来ない?』

ハイリスクなことを言われ、実行したくても何もできない。

『少し考えておくよ…』

そう返信すると

『君、定義はわからないが知らず知らずのうちに【心理的虐待】受けてないか?』


よくわからないけどそうかもしれない。

だとしたら逃げ場を作らないと本当に心が壊れていってしまう。

結子は勇気を出し

『かなたの家に逃げに行く…。このままでは心が壊れる』

と送った。














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