親という壁

かなたとの付き合いが始まったのが嬉しいのか

『ねぇ、よかったら今夜通話してくれないかな』

とはしゃぎ気味にメッセージを送る。

『いいよ。何時からにする?』

あっさり承諾されて余計に嬉しくなる結子。


『じゃあ…22時からで』

『了解だよ、通話するSNSの連絡先送るね』


かなたってどんな声の人なのだろう。

プロフィールには同級生の学年が書いてあったけど

年齢詐称したおじさんじゃないよね?

嫌な展開を頭の隅で考えながらも、通話の時間を待つ。


だが親にネット上で恋人できた、なんて言ったら猛反対どころかスマホ没収と解約される。

数年前、結子の母親が言った言葉を思い出す。

『所詮、ネット上でできた恋人はネットだけの関係性。だからネットから実際の恋愛に発展したらスマホ没収だからね、あとスマホ解約。恋愛は現実で探しなさい』

この時代、ネット上の関係からの実際の恋愛になるケースも多いのになぜ昭和時代のような考え方をするのだろう。


21時半

「結子、スマホ預けなさい」

21時半にはスマホを親に預けないといけないルールがあるのを思い出す。

ここで「一旦貸して」とは言えない、かなたとの関係性がバレてしまう。

結子はそっとスマホの電源を切り、親にスマホを預けた。


恋愛の自由って…なんだろう。

小学生や中学生ならまだ分かる。なのに高校2年でこんな制限だらけなのか。

ニュースで【ネットで知り合った高校生が40代男に―】なんていうのをたまに聞くけど今は必ずしも【ネット恋愛=悪】ではない時代。

かなたに心の中で『約束守れなくてごめんね』と言いながら結子は部屋に戻った。


【親の権限でスマホのロック解除】をされないことを願いながら。








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