第3話


 荷台の上で風を颯爽と浴びながら私──マリーは目的地に向っている。


 王国内の半分は広大な平原で緑が豊かな国として隣国では『土地として』の評判は良い。


 いつもの調子で軽快に飛ばしていく馬を巧みに操りながら、髭面は私に顔を向けてきた。


「姫様、今日はいい天気ですね」

「ええ」

「捕らえるのには格好の日和ではありませんか?」

「ええ、そうね」


 はっはっは、と笑いながら馬の手綱を握っている家臣に私は微笑みを向けてから空を仰ぐ。


 そうね。捕らえてゴロゴロと彼が転がるなら、地面は乾いてる方が汚れないわよね。


 彼の事を考えながら広々とした草原を一望していると、進行方向に小さな家が見えてきた。


 米粒程のサイズで木造の家がちょこん、と建っているのがわかる。


「今日もいつもの感じでよろしいですかな?」


 顔を正面に向けたまま家臣が声を張った。


「ええ。頼みますわ」


 私はしゃがんで荷台に積んであった拡声器を左手で拾った。


 馬は少しスピードを上げた──。

 

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