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「初めに自己紹介としよう。私は和佐と言う」


 和佐は先ほどまでの畏まった喋り方から砕けた話し方に変わり、端的に一言名前だけ名乗ると、和佐は横にいる少年のほうを向いて言葉を続ける。


「私の隣にいるのはひたちで、月が出でると書く」

「私は月出と申します。和佐とは幼いころからの付き合いで、今もこうして一緒に生活をしております」


 月出は和佐に紹介され真っすぐにこちらを見て名を名乗る。改めて見ると、端正な顔をしており、透き通った美しい肌はどこか病弱的である。先ほど和佐に煩いと叫んだ時とは異なり、物腰は低く、声は男性とも女性とも言えぬ中性的な声である。その声は、どこか謎の声に通ずるものがあった。年齢は和佐と同い年か少し年上といったところであろうか。


 二人の自己紹介を受け、私たちも続いて自己紹介をする。


「私は天野夜月と言います」

「俺は篠森定といいます」


 お互いの名前を言い合うと、和佐が嬉しそうに篠森の顔を見つめるので篠森はきょとんと間抜け面をする。


「何か顔についていますか?」


 篠森が不安そうに言うと和佐は笑いだす。


「ははは。違うんだ。あまりにも顔が似ているからさ」

「私も初めて和佐さんを見たとき驚きました」


 私が頷くと月出が笑い転げる和佐に変わって答える。


「和佐と定さんは血がつながっているのだから、少しくらい似ているのは当然かもしれませんね。しかし、あまりにも先祖返りと言える」


 月出の言葉に私たちは驚愕すると共に、すぐに納得する。もう一度、和佐と篠森の顔を交互に見ると、見れば見るほど、その顔立ちは一緒である。和佐のほうが篠森よりも大人びた顔をしており、薄くそばかすがある程度だろうか。ぱっと見ただけでは同一人物である。


 篠森も改めて和佐の顔を眺めて、不思議そうな顔をした後、自信の中で何か納得したのか小さく何度か頷く。


「やはり、ご先祖さんだったのですね」

「ははは。まさかこんなところで自分の血縁者に出会うなんて夢にも思っていなかったよ。定は私に似ていい顔をしているね」


 和佐は子供の用にはしゃぐ。少し大人びた雰囲気ではあるものの、私たちと歳は大して変わらぬはずである。年相応の反応をすると、それは篠森と瓜二つである。


和佐は、いい顔だと何度も言いながら篠森の顔をまじまじと見る。篠森はきまづそうに少し体をのけぞらせながら助けてと言わんばかりに目を私に向ける。私は知らないふりをすると、そっと指で腕をつんつんとされるも知らないふりをする。


「ここは一体どこなんですか?」


私がそう話を切り出すと、和佐は席に戻り、おちゃらけていた顔から真面目な顔へ瞬時に変わる。篠森も和佐が離れたことに安心したような顔をする。


 日本に似た土地。しかし、私たちが住んでいた場所とは違う世界であると確信していた。では一体ここはどこなのか?小説に出てくる、最近はやりの異世界とでもいうのであろうか。


この問いに答えてくれたのは月出であった。


「ここは高天原です」

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