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時計を見るとまだ朝の五時を指していた。目を閉じるも頭は冴えわたり先ほどの夢の内容が脳内でぐるぐると走馬灯のように蘇ってしまい寝付ける気配もないため、テストということもあり潔く起きて勉強をすることにした。


カーテンとドアを開け気分転換にベランダにでると、早起きな太陽はすでに空を明るく染め、早くも数匹の蝉が泣き始まっていた。日中とは異なる、まだ薄青い空は澄んでおり、それほど気温の高くない空気を肌で感じた。普段では見ることのない景色に徳したように思えた。新鮮な空気に頭がスッキリするような感覚を得る。


 昨晩も遅くまで勉強はしていたが、再度復習を行う。篠森に教えてもらったことを頭に叩きつけ、数学の練習問題を解く。まだ記憶が新しいお陰か、演習問題はなかなかに自己採点での出来は良かった。


今日のテストが帰ってくる頃には夏休みが始まる。夏休みの初日には篠森と約束した篠森祭がある。昨日篠森神社へいったことが引き金となったのか分からないが、長らく見ることのなかった謎の声の夢を見た。


私は篠森神社に大事なヒントが隠されているような気がした。


机の上に置いていたペンに手が当たりコロコロと音をたてながら転がり机の下へと潜り込む。私は椅子から降りて机の下に潜りペンを拾う。出ようとして体を少しあげると、ゴンと頭が机にぶつかる。上を見ると机の引き戸を支える木が出っ張って取り付けられており、どうやらそこにぶつけたようだ。机の下には幼少期に書いた落書きが沢山あった。拙い字で自分の名前や昔飼っていた犬の名前、家族の名前があった。当時一筆ごとにペンの色を変えるのにはまっていたのか、数色の色を使って文字が落書きされている。懐かしい単語が並ぶ中、知らない単語があることに気づいた。「彩」と人名なのか、はたまた何かの本に出てくるキャラなのかわからない単語である。見様見真似で書いたのか地のバランスはとても悪く、書きなれていないのが見て取れる。もう一つ、気になるものがあった。少し大人びた字で書かれた「夜月」の文字。私らしからぬ字だ。本当にこんなきれいな字が当時の私にかけたのだろうかと不思議に思いつつ、これらを書いていた幼き頃を思い出し、私は小さく微笑んだ。


気づけば篠森と朝の通学の待ち合わせの時間が近づいており、私はあわてて支度を整えた。母の用意してくれた朝食を手短に食べて、すぐに着替える。最後はいつも、鏡で制服のリボンが曲がっていないかを確かめる。私の日課だ。


待ち合わせ場所には既に篠森が来ていた。私が篠森より遅く来ることなどめったにないため、篠森は少し驚いたようであった。


いつものように、自転車を横並びに漕ぎながらテスト勉強の進捗を話した。


 朝は出来が良かったことを伝えると篠森は嬉しそうに笑う。


実際にテストは可も不可もなくの出来具合であった。赤点はないだろうといったところだ。数学だけは篠森のおかげもありだいぶ解くことができた。


 数日後に返却された採点結果も数学が一番よく、数学の先生に良く勉強をしたと褒められた。高校生になってからの数学のテストの結果を思い出せば、今回が一番出来が良かった。


返却後、授業が終了し数学の出来が一番良かったと篠森に言うと、篠森も嬉しそうにして頑張ったとねぎらってくれた。


テスト返却も終わり、大掃除も終わり、校長の長い講和も終わった。


教室中にそわそわと浮足立った空気が流れ、誰もが今か今かと担任の先生がやってきて解散を命じるのを待ち臨んだ。私も帰る準備を済ませスマートフォンをぼんやりと眺める。


 ぶぶ


スマートフォンが振動し画面上部に通知がでる。篠森からのメッセージである。


 通知を開くと(今日はどんな格好でくるの?)と書かれていた。


今日は夏休み前最終日で、篠森祭だ。

私は適当に返事をすると(浴衣で行こうよ)と間を置かずに返事が返ってくる。


私は呆れつつ了承の返事を送ると、そのタイミングで担任が教室へ入ってくる。手短に夏休み後全員そろって会いましょう。と言いそそくさと教室から去っていく。その後ろ姿は、どこか浮足立っており先生も嬉しそうであった。

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