第2話 幕間 親友
「私たちずっと親友ですね」
「そういうこと、真面目な顔して言うなよ。恥ずかしい」
「恥ずかしくなんかないです。こういうことははっきりと言っておいた方がいいんです。私たちは、熱い信頼と友情と情熱で結ばれたゆるぎない絆を持つ親友なのですよ。この溢れる気持ちを言葉にしないなんて、むしろもったいないです。人類の損失です」
「うわ、お前はまたそういうことを。もう十分だろって言ってるんだよ。そんなん、目を見ればだいたいわかんだろ」
「うっ、目を見ればなんてっ。それは、殺し文句です。すねた表情でそんな可愛いことを言って、さてはツンデレさんですねっ。ツンデレ萌えの私を萌え殺すつもりですねっ」
「わけわかんねえ」
「まあいいでしょう。では、お望み通りもう言いません。私たちは言わなくてもわかりあえるぐらい心が通い合ってるってことですものね。その代わり、目と心で訴えますっ」
「うっ、そんな目で見るな。しっぽ振るな。まとわりついてくるな。うざいからいいかげんやめろ」
「もう、照れやさんなんだから。そういうあなたに百歩譲って、私から妥協案です。……なでてくれたら、やめますよ?」
「ちっ、ほんとに犬かよ」
そう言いながらも、少女は、もう一人の少女の頭へと手をのばした。
恥ずかしいやり取りを繰り広げているのは、愛らしい顔立ちをしたビスケット色のふわふわのボブカットの少女と、整った顔立ちをした黒髪のさらさらのロングヘアの少女だった。
学校が違うのか、二人はそれぞれ異なる制服を着ている。
ボブカットの少女はセーラー服。小柄で華奢な体に、庇護欲を誘いそうな愛らしい容姿。常に不機嫌そうな表情と乱暴な口ぶりが違和感なく板についているのは、少女の持つ、強い瞳の輝きのせいだ。
ロングヘアの少女はブレザーの制服を着ている。すらりとした肢体に、腰までの黒髪が清楚な印象を与える。人懐こい表情で、不機嫌な少女に臆することなく、好意を全面に押し出している。
彼女がキラキラとした目で見つめると、乱暴な口ぶりの少女は照れくさそうにそっぽを向く。そのやり取りは、ほほ笑ましい。
駅から少し離れた場所に位置するその小さな公園を訪れるのは、買い物帰りの老夫婦と、犬の散歩にきた小学生だけだ。
一つしかない公園のベンチに仲良く座る二人の美少女の姿はたいそう華やかで、ここが人通りの多い場所だったら注目を集めること間違いなしだ。
しかし、ここを通り過ぎる人々にとっては、既に日常の光景となって久しい。誰からも注目されることなく、二人の少女は、ほほ笑ましい愛の語らいを繰り広げていた。
ロングヘアの少女は、ボブカットの少女の脇ににじりより、下から見上げる。
「あの、また来週、遊びに行ってもいいですか?」
「ああ、母さんが最近調子よさそうだから、大丈夫」
照れたようにそっぽを向く少女に許可をもらって、黒髪の少女は、満面の笑みを浮かべる。
「では、お菓子を持って遊びに行きます!」
──そんな他愛無いやり取りの最中に「それ」は起こった。
二人の少女はその道を分かたれた。
ただ一人──めいだけがこの世界へと召喚されたのだった。
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