第9話

「ちぇっ、雪平はいいのに何で俺はダメなんだよ」



あさひ 佑成ゆうせい


不満を絵に描いたような口の尖らせ方をする彼は、あたしの中学からの知り合いだ。



制服の中に着たパーカーがよく似合う典型的なスポーツ万能お馬鹿タイプで、クラスのムードメーカーだったりする。


あたしの知る限りずっと特定の相手はいないらしいけど。


昔からやたらとモテるのよね、この男。




「んー……なんとなく?」


「んだよ、それ。ケチ」



拗ねたように言うくせに。



「佑成〜なにしてんのー? お前もこっち混ざれよ」


「あ、わりぃ。今行くってー」



ほら。


すぐ新しい〝楽しみ〟に飛びつく。



「じゃ、また気が向いたら俺にも〝美味しい手料理〟わけてくれよ、藍原?」



……もう。


ほんと、口が上手いんだから。



「はいはい。……あ、待って。髪にゴミついてる」


「……おぉ、サンキュ」



ニィ、と笑った背中を見送るように、あたしはひらひらと手を振った。



旭 佑成は人が大好き。


色んな人と絡んで、騒ぎたい。


そういうやつなんだ。



「ごめんね〜みんな。アイツほんと──」

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