第6話

「椅子は俺と啓吾に任せて」



返事をするより先に、あたしと愛花の椅子はひょいと彼らに持ち上げられていた。


気づいたあたしは、すぐ雪平くんの元へと駆け寄る。



「行こー藍原さん」


「いいのにー」



ほんと優しいなぁ、雪平くん。


いっつもにこにこしてて、見てるとこっちまで爽やかな気持ちになれる、不思議な男の子。



顔が良くて、おまけに性格もいいなんて。


そりゃあモテるのも納得しちゃうよね。



「ありがと」


「どういたしまして」



運んでくれた感謝と共に頭をよしよしと撫でると、雪平くんは照れたように笑った。



か、かわいい〜っ!


まるで尻尾振って喜んでる犬みたいに見えて、悶絶してしまう。



やっぱり雪平くんはあたしの癒しだわ。


いくら女の子たちからの視線が突き刺さろうと耐えられるのは、この圧倒的癒しパワーのおかげかもしれない……!



「藍原さんって、頭撫でるの好きだよね」


「えっ」



突然落とされたそれに、あたしははっと我に返った。


まさかバレてたとは。


なんか雪平くん、昔おばあちゃんの家で飼ってた犬に似てて、ついこうしたくなっちゃうのよね。



……気をつけよう。


そう思った時、隣でコトンという音が鳴った。

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