第10話

「あ。沙弥、今ニヤっとしたでしょ」



と突然、まなみんがピシリ指を差して覗き込んできた。



「し、してないよ!」



すぐにあたしは抗議する。



「ほんとにー?」


「ほんとよ!」



……いや、ちょっとはしてたかもしれないけど。


もしそうだとしてもしょうがないじゃん!



じっと眼差しを送っていると、まなみんが小さく息を吐いた。



「じゃ、そういうことにしといてあげる」



……もぉ、まなみんの意地悪。


勝ち誇ったような笑みを見せられ、あたしはぷくっと頬を膨らませた。



その直後、涼子ちんが両手を胸にあて、そろりと口を開く。



「たしかに昨日のサーヤ、いつにも増してステキな歌声だったわ……」



「あ、涼子観たんだ」


「ええ、当然よ。そういう愛実ちゃんも観たんでしょう?」


「まあ、そうだけど」




ふたりが話しているのは、昨日やってた音楽番組のことだ。


毎週火曜の夕方に放送されているそれは、その都度変わる5組のゲストアーティストによって成り立っている、人気番組。


そして、昨日そこにゲストとして登場したのがサーヤだった、というわけなんだけど……。

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