第9話

「もう大丈夫なの?」


「うん! しばらくは休まずにいけそうなんだ〜」



尋ねてきたまなみんに、笑顔で返す。


すると、涼子ちんが潤んだ瞳でじぃっと見つめてきた。



「無理はしないでね、沙弥ちゃん! こうやって沙弥ちゃんとおしゃべりできるのは嬉しいけど、やっぱり身体が一番だもの。あっ、ノートの心配ならいらないわ。私が……」


「涼子ちん、あの、大丈夫だよ……」


「でた、涼子の過保護」



延々と喋る涼子ちんの声に紛れて、まなみんの呟きがかすかにだけ聞こえた。




「おい、昨日の観たか!?」



そんな時、誰かの興奮した声が教卓の方から響いた。



「サーヤだろ? 観たに決まってんじゃん」



“サーヤ”


明るい茶色の髪に、ハーフアップのツインテールがトレードマークの、新人アイドルの名前だ。




「かわいいよなー。一度でいいから、会ってみてーよ」


「俺もー」




──ドキッ。



かわいい、かあ……。


くふふっ。

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