第29話 風呂だ!

村長の家はギルドの三軒隣、割と立派な家だ。


血だらけの俺は道を歩くと心配されたけど、返り血とわかり皆んなほっとする。

ただ警戒はしてくれと宿のオヤジさんが、狼を片付けていた人達に言っていた。


そして村長宅に着くとオヤジさんが玄関の扉を叩く、中から返事がある。

「はーいどなた?」

「宿屋だ、お客さんに風呂を貸してもらえるか?」

「宿屋のオジサン」

ドアを開けて出て来たのは若い女性。


「うわー何その血だらけの人、風呂よりも手当しないと!」

「大丈夫だから安心してくれ、これは狼を退治した時に浴びた血だから坊主は怪我は無い、ただ水だと寒いと言われたので、風呂を此処に借りようと来ただけだよ」

マジマジと俺をみる女の人。


「待ってお母さんに聞いてくる」

一度扉が閉まり、少し待っていると、今度は年配の女性が出てくる。


「あら英雄えいゆうさんが血だらけで大変だと伺ったけど、本当に大丈夫なの?」

「あゝ傷も無い、浴びた血だそれよりも風呂は貸してもらえるのか?」

「良いんだけど、昨日は入る予定日じゃなかったからお湯がないのよ」

あゝ夫婦のあの日じゃないのねフフフ。


「貴方英雄さん、その含み笑いは何、確かに貴方が思っていることかも知れないけど、お風呂って水汲みは女性がやるのよ!お風呂一杯の水を溜めるのにどれほど井戸と往復すると思うのよ!毎日入れるわけはないでしょう!」

心を読まれた、それと水汲みの問題か……。


「笑ってごめんなさい」

「良いのよ、水汲みは女性の仕事だけど、何回もだときついから5日に1度に決めているのよ後は体を拭くだけなの、裏に回ってお風呂があるからとりあえず水を汲むわよ、宿屋さんも手伝うわよね!」

睨まれる宿屋のオヤジさん、此処は助けないと。


「ええと村長の奥様、水は自分でどうにかしますし、火魔法で温められると思うんですけど?」

「あら貴方2属性持ちなの、ならお風呂小屋を燃やさない様に気をつけて沸かしてくれる、……婿に欲しいわね」

何か最後に言っているぞ、聞かなかった事にしよう。


そして裏の風呂に案内される、どうやら岩をくり抜いた五右衛門風呂風な形だった。


「お湯を溜めたら外で血を洗い流してから入ってね、隙間の偶に血が入って掃除が大変だからね」

確かに中はツルツルでは無くイシノミの跡が有る。


「脱いだ洋服は置いておいて、後で洗濯してあげるわよ、それじゃ後はよろしくね」

奥様は退場、宿屋のオヤジは?


「着替えを持ってくるけど、サイズは……?」

「あゝマジックバックに入ってますから大丈夫です」

「そうかなら、後で戻ったら朝食を出すよ、帰ったら厨房に声を掛けてくれよ!」

「はーいまた後で」

宿屋のオヤジも退場、皆んな親切な人たちばかりだ。 


そして桶に水を入れてまずは手を洗い、きれいになったら風呂の水を入れる。

手のヒラから出るけど一緒に血が混じりそうで最初に手を洗った。


それに石鹸があるから、割と綺麗になる。









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