第3話

あの日から2週間が過ぎた。ビンテット公爵家から逃げる様に帰って来ると、高熱が出てしまい1週間寝込んでしまった。

高熱に冒されてなのか、あの時のミハイル様が悪夢となって私に襲いかかってきて、熱が下がっても恐怖に心が震えて、ベッドから起き上がる事が出来なかった。

お母様とお父様には何があったのかと聞かれたけれど、ミハイル様から言われた『不細工』『不幸』『醜穢しゅうわいな声』『醜い』の言葉を思い出すと、また涙が流れて止まらなくなる。優しい笑顔をしながら『不細工』と、心配している顔をしながら『醜い』と……。


私に言ってくれた『愛している』『アイリスは美しい』『一緒に居ると幸せだ』と、仰ってくれた言葉は嘘だったのですか?本当は私の事を嫌いだったのですか?


「ミハイル様は……、私が、ミハイル様を愛してるのを、うぅ、心の中では、不快に思っていたのでしょか……」


泣きながらそう呟くと、お母様はギュッと抱きしめてくれた。その温かさを感じて、私は余計に涙が止まらなくなってしまった。


「お嬢様、またミハイル様が、お見舞いにいらしてますが、いかが致しましょうか?」


お父様、お母様と話をしていると、執事長のハイドンが困った顔をしてやって来ました。私が目を覚ましてから毎日お見舞い来てくれて居るのですが、また、あの言葉を言われたら私はどうなってしまうか分からない。恐くて不安でずっと会うのをお断りしているのに……。その思いがお父様に伝わったのか、怒りに満ちた表情でソファーから立ち上がった。


「しつこい奴だ!帰らせろ!」


「承知いたしました」


「ハイドン、お待ちなさい」


お母様はミハイル様の所に戻ろうとしたハイドンを呼び止めてベットの淵に軽く腰掛けると、私を優しく抱きしめた。そして、泣いてる子供をあやすそうに頭を撫でてくれる優しく温かいその手に、強張っていた私の心が解けてく感じがした。


「アイリス。辛いのは分かるけど、そろそろ決めないといけないわ」

「……決める?」

「ええ、アイリスの未来の為に」

「私の……、未来の為?」

「そうよ。アイリスがミハイル様との婚約を破棄したいのなら、お母様がなんとかするわ!」

「えっ‼︎婚約破棄‼︎」

 

お母様のその言葉に、私は頭を殴られたような衝撃を受けました!あんな酷い事を言われたのに、私は婚約を破棄するなど考えてもみなかったのです。ミハイル様と別れるなど思いもしなかたのです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る