第26話:元カノとの再会
「……って、なんだ。菜々美か」
「ちょっと。なんだとは何よ。なんだとは」
俺は菜々美の姿を見ながらそう呟いていった。すると菜々美の耳にも俺の声が届いていたようでムッとした表情をしながらそう言ってきた。
「……大樹、この綺麗な女の人は誰なの?」
「ん? あぁ、俺の元カノだよ」
「え? って、あぁ。この人が例の元カノさんなんだ? 物凄く美人な女性だね」
「まぁ見た目だけは凄く良いんだけどな……」
するとその時、凪が俺に向かってコソコソとそんな事を尋ねてきたので、目の前にいる女が誰なのかを答えていった。
すると凪はビックリとしながらも菜々美の事を美人な女性だと評していった。まぁやっぱり見た目だけは物凄く美人なんだよな。コイツ。
「ちょっと、何私の事を無視してんのよ?」
「いや、無視なんかしてねぇよ。それで? 何で俺の大学に来てんだよ? お前違う大学だろ」
イライラとしながら俺にそう言ってきた菜々美に対して俺はそう返事を返していった。
菜々美の通ってる大学は俺とは違うのに、何で急に俺の通ってる大学に来てんだ? 明らかにおかしな行動だろ。
「何でって、そんなのアンタに用があったからに決まってるでしょ?」
「え? 俺に? 一体どんな用だよ? 何か家に忘れ物でもあったとかか?」
「はぁ、それくらいすぐに察しなさいよ。アンタと寄りを戻してやるためにここまで来てあげたのよ」
「……は?」
菜々美は急にそんな事をぶっこんできた。俺は菜々美の言葉をすぐには理解出来ずに思わずキョトンとした顔をしながらそう返事を返していった。
そしてそんな俺の不思議な表情を見て何を勘違いしたのか、菜々美はドヤ顔を浮かべながらこんな事を続けて言ってきた。
「ふふん、そんなビックリとした顔をするなんて、よっぽど私が恋しかったようね。ふふ、良いわよ、それじゃあ今すぐにでも恋人に戻りま――」
「え、嫌なんだけど?」
「戻りましょ……って、は、はぁ!? 何で嫌なのよ!? 私みたいな美人モデルと付き合えるなんて光栄な事でしょ!」
速攻で嫌だと言うと、途端に菜々美はビックリとした表情になって大きな声を出していった。
「いや光栄な事って……お前は別れた理由を覚えてねぇのかよ? 菜々美が浮気したからだろ。それなのに何で俺が喜んで寄りを戻さなきゃなんねぇんだよ?」
「それはまぁ悪かったわよ。でも浮気をしたのはあの日の一回だけなのよ? たった一回くらいの過ちくらい彼氏なら許してくれたって別にいいじゃん。一度くらいの浮気を許せないなんてみみっちいわよ? 男ならたった一度の浮気くらい笑って許しなさいよ」
「いや何で俺が悪いみたいな感じになってんだよ? というかそれだけじゃなくて付き合ってた当時は俺の事を散々と奴隷のように扱ってたじゃねぇか。またお前と付き合って奴隷生活にさせられるなんて御免だからな。だからお前と寄りを戻すなんて絶対に無いわ」
「え? 私は別にアンタの事を奴隷に扱った事なんて一度もないじゃん。そんな変なレッテル貼らないでよね」
俺がそう言っていくと菜々美はキョトンとした表情でそう返事を返してきた。どうやら菜々美は俺の事を奴隷扱いしてたという意識が本当に無いようだ。
「いやいや、何言ってんだよ? 毎日家の掃除に洗濯、料理を全部俺にやらせてただろ? それ以外にも毎日色々な事を俺に命令しまくってきてただろ」
「はぁ、それはしょうがないでしょ。私だって毎日仕事で忙しかったんだから、家の事はアンタに任せるしかないでしょ。恋人なんだから私の身の回りの事くらいやってくれたって良いじゃん」
「何が仕事で毎日忙しいだよ。毎日のようにモデル仲間と遊びまくってたりしてたじゃねぇか」
「はぁ、全く……人付き合いだって大切な仕事なんだから仕方ないでしょ。それくらい理解しなさいよ。子供じゃないんだからさ」
菜々美はため息交じりにそんな事を言ってきた。まるで俺が悪いと言ってるような雰囲気を感じて余計に腹が立つ。
「だから何で俺が悪いみたいな感じにしてんだよ。そもそも俺達ってそんな彼氏彼女らしい事も全然してなかったんだし、別にまた付き合う必要なんてないだろ」
「いや何言ってんのよ? ちゃんと彼氏彼女らしくエッチだってしてあげてたじゃん」
「いやしてあげてたって……別に俺はお前とエッチがしたくて付き合ってた訳じゃねぇし、そもそもお前とエッチしてたのって半年に一回くらいじゃねぇか」
「はぁ、全くもう……ああ言えばこう言うわね、アンタ。わかったわよ。それじゃあこれからは毎日でもエッチしましょ。それで良いんでしょ?」
「は、はぁ? 何いってんだよ?」
「ふふん、別に恥ずかしがらなくて良いわよ。アンタも男なんだからエッチさえいつでも出来ればまた付き合いたいって思うでしょ? だからさ、これから仲直り記念に今からホテルに行ってエッチしましょ。それで仲直りって事でいいでしょ?」
「は、はぁ? い、いや本当に何いってんだよ……って、うおいっ! いきなり俺の腕に引っ付くな!」
「ふふ、今更恥ずかしがらなくていいじゃん。ほらほら、それじゃあ今からラブホに行きま――」
「ちょ、ちょっと。大樹君が迷惑してるんで離してあげてください」
「行きましょ……って、え?」
「え? あ、凪……」
菜々美とそんなやり取りをずっとしていると、ふと凪が心配そうな表情をしながら菜々美にそう言って注意を促していってくれた。
「え? ……って、何この子……」
すると菜々美は凪の姿に今更気が付いたようで、何だか物凄くビックリとした表情を浮かべてきた。
まぁでもイケメン好きの菜々美の事だ。もしかしたらイケメン男の凪を見て一目惚れをしまったのかもしれないな。
という事で俺は軽口を叩くつもりで笑いながら菜々美にこう言っていった。
「はは、どうした菜々美? 凪がイケメン男が過ぎて惚れちまったか?」
「は、はぁ? いや何言ってんのよ大樹? イケメン男?」
「? 何って……どういう事だよ?」
「いや、どうもこうも、この子……どう見たって女じゃん」
「え……? って、は、はぁ!?」
「っ!?」
菜々美は凪の事を指差しながらそんな意味不明な事を言ってきた。俺は菜々美の言葉の意味が理解出来ずに思わず大きな声を出していってしまった。
そしてそのまま凪の方を見ていくと……何故か凪もビックリとした表情を浮かべ始めていっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます