第25話:凪と一緒に帰っていると……
とある日の夕方。
「ふぁあ……ふぅ」
俺は大きな欠伸をしながら大学内をトボトボと歩いていた。最近はバイトを入れすぎたせいで寝不足な日々になっていた。
まぁでもバイトばかりの生活を送ってるけどそれを苦に思っているわけでは決して無い。俺自身バイトは好きだしお金が手に入る事自体嬉しい事だしな。
それに飲み会とかドライブとか遊ぶ予定も沢山あるし、ここからしばらくはバイトをして金を稼いでいかなきゃだよな。
「いやそれにしてもここしばらくは本当に楽しい日々を過ごせてるよなー」
俺は軽く背伸びをしながらそんな事を呟いていった。
まぁ彼女と別れてちょっとだけ感傷に浸る時もあったけど、でも友達と遊んだり飲み会をしてきたおかげで俺もすぐに復活する事が出来た。
その中でも凪には特に感謝をしなきゃだよな。だって凪が特に俺と一緒につるんでくれてるわけだし。本当にアイツは誰よりも優しくて友達思いの良いヤツだよな。
「はは、もしも俺が女だったら絶対に凪みたいな友達思いなヤツと付き合いたいよなー」
「? 僕がどうしたって?」
「え……って、えぇっ!? な、凪!?」
何の気なしにそんな事を呟いていたら、急に後ろから凪に声をかけられていった。俺は思わずビックリとして大きな声を出してしまった。
「あはは、ビックリしすぎでしょ」
「いや、そりゃあ急に後ろから声をかけられたらビックリとするに決まってるだろ」
「あはは、それはゴメンって。それで? 大樹は今から帰りなの?」
「あぁ、そうだよ。ひょっとして凪も今から帰りなのか?」
「うん、僕もちょうど帰る所だったんだよ。あ、そうだ。それなら良かったら一緒に帰ろうよ?」
「あぁ、もちろん良いぞ。それじゃあ帰ろうぜ」
「うん、わかった」
という事で俺達は今日も仲良く一緒に帰って行く事にした。そしてその帰り道に凪は俺にこんな事を尋ねてきた。
「あ、そうだ。それでさ、さっきは僕の名前を出してたようだけど……ひょっとして僕に何か用事でもあったの?」
「あー……いや、別に用ってわけじゃねぇよ。ただ凪と一緒に遊ぶのは楽しいなーって思って独り言で呟いてただけさ」
「へぇ、そんな事を呟いてたんだ? はは、それは嬉しい独り言だね」
「いや俺からしたら恥ずかしいけどな。独り言なんて聞かれてると思わないで呟いてるわけだからさ……ふぁああ。ふぅ……」
「あはは、確かにそうだねー……って、何だか凄く大きな欠伸だね? 大樹が欠伸をしてるなんて珍しいよね。昨日は夜更かしでもしちゃったの?」
「ん? あぁ、昨日は夜遅くまでバイトが入っててさ。それで昨日は寝るのが遅くなっちゃたから欠伸が止まらなくてな」
「あぁ、そうだったんだ。まぁ働くってのは凄く良い事だけど、体調にはちゃんと気を付けなきゃだよ? 疲れてる時はしっかりと休みなよ」
「あぁ、もちろんわかってるよ。ちゃんと来週のドライブには万全の体調で臨むからさ」
「ふふ、そっかそっか。それなら良かったよ」
俺がそんな事を言っていくと、凪は優しく微笑みながらそう返事を返してきてくれた。でも……。
「いやでも奈美さんの件は残念だったなぁ。一緒にドライブに行きたかったけど、仕事があるんじゃ仕方ないよなー」
「え? あ、う、うん。そうだね……」
続けて俺がそんな事を言っていくと、凪は急に渋い顔をしだしていった。
実はちょっと前に凪にお願いして奈美さんもドライブに誘ってみたんだけど、残念ながら奈美さんはその日は仕事があるとの事で断られてしまったんだ。
奈美さんに断られてしまったのは少し悲しいけど、まぁでも仕事じゃあ仕方ないよな。
「あ、ま、まぁでも姉さんもすっごく残念がってたよ。大樹と一緒にドライブに行きたかったって言ってたからね」
「へぇ、そうなんだ? それなら良かった。よし、それじゃあまた今度日を改めていつか三人でドライブに行こうぜ」
「う、うん、そうだね。そ、それじゃあその……姉さんにそう伝えてみる事にするよ」
「あぁ、よろしく頼むな」
という事で俺は凪にそう言っていった。ま、いつか奈美さんとも一緒にドライブに行けたら嬉しいな。
そしてその後も俺は凪と仲良く話しながら帰路へとついていった。しかしその途中で……。
「……あっ! ようやく見つけた! ちょっと大樹!」
「……え?」
「……ん? ……って、あ」
その時、ふと前方で俺の事を指差しながら大きな声を出してくる女が立っていた。そしてその女は俺の見覚えある女だった。
今目の前にいる女は明るい金髪にスレンダーな体型で、ブランド物の服と派手なピアスを身に着けている完全なるギャル系の女だ。
そして切れ長な瞳が特徴的で常に苛立った表情をしているアイツはまさしく……俺の元カノである世良菜々美だった。
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