第24話:仕方ない、そろそろ寄りを戻すか(菜々美視点)

 とある日の午後。


「はぁ、最近部屋の中が色々とヤバすぎるわよね……」


 私はリビングのソファに寝転びながら周りを見渡していった。


 リビングの中は脱ぎ散らかした衣服やコンビニ弁当の容器やペットボトルが散乱している。いつの間にか私の家は酷いゴミ部屋と化していた。


 だって洗濯機の使い方なんて知らないし、試しに一度洗濯してみたら服が縮んじゃったから、それ以来一度着た服は全部そこら辺に置きっぱなしだ。


 それに料理も出来ないから毎日コンビニのご飯を食べている。だけどゴミ捨てのルールとか全然わからないからゴミは全部テーブルの上とかに置きっぱなしにしてた。


 まぁそんな訳で幼馴染のアイツがいなくなってから家事をするヤツがいなくなったので、私の家はどんどんと汚くなってきていた。


「はぁ、全くもう。流石にこんな汚くなると嫌な気分になるわね……って、うん?」


―― ぴこんっ♪


 そんな事を思いながらイライラとしてると急に私のスマホが鳴り出した。SNSにダイレクトメールが飛んできたようだ。


 なので私はイライラしながらもスマホを開いてDMを確認してってみた。すると……。


「げっ……またかよ……」


 それは私と遊びたいというモデル男子からのお誘いDMだった。でも相互フォロワーじゃないのでよく知らないモデルの男だ。多分あのゲロカス男周りのモデル男なんだろうな。


「はぁ、マジでふざけてるわ……」


 という事で私はそのDMを見ながらため息をついていった。


 ここ最近はモデルの男連中からしょっちゅう遊びたいというDMが飛んでくるようになっていた。理由はあのゲロカス男が私とエッチしまくってたと吹聴してるせいだ。


 まぁでもあのゲロカス男は色々な女と遊んでたというのが周囲にバレていたので、私は騙されただけだと言って嘘泣きをしながら周りの仲良い子達に弁明していった。


 そして私の嘘泣きを見て周りの仲の良い子達は全員それで納得してくれたので、今は私の事を凄く心配してくれてる状態だからあのゲロカス男との件は全然ノーダメだった。


 だけどあのゲロカス男のせいで私のSNSには相互フォロワーでも何でもないよく知らんモデルの男から会いたいってDMが物凄く飛んでくるので非常にウザい。だって全員ヤリモク男だしさ。そんなのカス男共と会う訳ねぇじゃん。


「はぁ、全く……こうなったらしばらくはスマホ見るの止めよ」


 あまりにもヤリモク男からのDMがウザすぎるので、私は言いながらスマホをテーブルに放り投げていった。


 というか世の中の男共ってこんなにもヤリモクが多いのかよ? ワンチャンあると思ってDM飛ばしてくるなエロ猿ばっかりじゃねぇかよ。


「あーあ、今思えばアイツだけは全然エロ猿とかそんなんじゃなかったよなぁ……って、え?」


―― バチンッ!


 そんな事を呟いていたら急に部屋中の電気が切れてしまった。それに暖房も一緒に切れている。という事はおそらく家のブレーカーが落ちたようだ。


「何で急にブレーカーが落ちるのよ。全くもうめんどくさいなぁ……」


 私は悪態を付きながらリビングから出て行って廊下にあるブレーカーをオンにしようとしていった。しかしブレーカーはオンになったままだった。という事はブレーカーが落ちたという訳では無さそうだ。


「うーん? ここら辺の区域で計画停電でもやってるのかな? でもそんなの私知らないしなぁ……」


 そもそも私は住んでる地区のお知らせなんて一切知らない。そういうのは全部アイツに任せてたから。というかそんな住んでる地区の情報ってどうやって調べれば良いのよ?


「うーん……って、あそうだ。もしかしたら家のポストになんかお知らせとか入ってるのかも」


 ふとそんな事を思いついたので、私は早速家の玄関を出てポストの方に向かってみる事にした。


 というかよく考えたらアイツと別れてから一度もポストを覗いてない事に今更ながら気が付いた。そしてアイツと別れてからもう二ヵ月近くも経つ。という事は……。


「……げ。ポストの中身パンパンじゃん……はぁ……」


 玄関を出てポストを覗いてみると、その中にはハガキや封筒などでパンパンに詰まってしまっていた。


 という事で私はため息を付きながらポストの中身をどんどんと取り出していってみた。すると私はすぐに電気が付かなくなった理由がわかった。それは……。


「え? 電気代未払い……? な、何よこれ?」


 私はそんなハガキを見つけてビックリとしてしまった。それは早くコンビニにいって電気代を支払わないと電気を付かなくさせるという催促状だった。


「それにこっちにはガスと水道代の請求書もあるんだけど? な、何よこれ? もしかしてこういうのって全部自分で支払わないといけないの? いやそんなの私知らないんだけど……」


 電気代とか水道代とかを毎月支払わなきゃいけないなんて私は知らなかった。


 そもそも私の家って一軒家なんだから水道とか電気とかって無料でずっと使い放題なんじゃないの? いやマジで意味わかんねぇわ……。


「あれ? でもさ、という事はもしかして……いつも電気代とか水道代とかそういうのは全部アイツが払ってたって事?」


 それじゃあ何よ? アイツは家の掃除や洗濯、料理に買い物とかしてただけじゃなくて、こういう電気代とかもしっかりと支払ってくれてたって事?


「いや何よそれ。アイツマジで役立ち過ぎじゃん」


 それにアイツは私の言う事は全部聞いてくれてたし、生理でしんどい時はいつも手厚く私のサポートをしてくれてたし、ヤリモク男でも無かったし……今にして思うとアイツは彼氏としてはまぁまぁの及第点ではあったよね。


 まぁアイツの顔はふつーだし話も全然面白くないヤツだったけど、でもよく考えたらアイツは私の代わりに身の回りの事を全てやってくれてたのよね。


 そう考えると別に無理して別れる必要なんて無かったわよね。アイツと付き合ってた方がメリットが多かったわけだしさ。


「……はぁ、しょうがない。それじゃあアイツと寄りを戻すとするか」


 それにここまで身の回りの事がボロボロになると色々としんどいもんね。という事で私はアイツと寄りを戻す事に決めた。


 まぁアイツもモデルの私と復縁出来るのなら大手を振って寄りを戻すに決まってるよね。それにアイツも男なわけだし、仲直りに一回エッチでもしてあげればすぐに機嫌も戻るでしょ。


 という事で私は早速アイツのLIMEを開いて“会いたい”とメッセージを送っていこうとした。しかし……。


「あ、そうだ。そういえばアイツ……私の事をブロックしてるのよね」


 そういえば別れ際に相互ブロックしちゃった事を思い出した。それじゃあアイツとやり取りなんて出来ないじゃん……。


 というか私の事をブロックするとか生意気過ぎるわよね。アイツと再会したらそれも文句を言ってやる。


 という事で私は仕方がないからアイツの通ってる大学に向かう事にした。アイツの大学には行った事があるからどこら辺にいるのかも何となくわかるしね。

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