第23話:凪からのお願い
「うん、それじゃあさ何となくイメージでいいんだけどさ、良かったら僕……じゃなくて、姉さんに似合いそうな服とかあったら大樹から教えてくれない?」
「え? 奈美さんに似合いそうな服?」
あまりにも突拍子もないなお願いだったので、俺はちょっとだけ不思議な顔をしながらそう尋ね返していった。
「そ、そうそう。いや実は姉さんってさ、あんまり女の子らしい服を着たりしないんだよね」
「へぇ、そうなんだ? それじゃあ普段は奈美さんってシンプル目な服装ばっかりなのかな?」
「うん、そうだね。いつもジーパンとかシンプルな服装ばっかり好んで着てるかもね。だから逆にスカートとかワンピースとかは全然着たりしてないんだ」
「へぇ、それはちょっと意外だな。だって奈美さんのメイド服めっちゃオシャレで似合ってたし、ああいう可愛らしい服装とか普段も着てるのかなって思ってたわ」
「え……に、似合ってた……そ、そっかそっか……」
「ん? どうしたよ? 凪?」
「え……? あ、ううん、なんでもないよ!」
凪は顔を赤くしたまま何か小さく呟いていたんだけど、俺は聞き取れなかったのでそう尋ねていった。
すると凪は顔を思いっきりブンブンと左右に振りながら何でもないと言ってきた。
「そ、そっか? まぁ何でも無いんならいいんだけど」
「う、うん。と、という事でせっかくだし男子目線でさ……姉さんに似合いそうな服とかアドバイスしてくれたら嬉しいんだ。そういうの頼めたりするかな?」
「あぁ、わかったよ。それくらいならお安い御用さ。うーん、それじゃあ早速……」
凪にそう言われたので俺は早速奈美さんに似合いそうな服装を頭の中で考えてみる事にした。
(確か奈美さんは身長が高くてスラっとした細身体型の中性的な美人さんだったよな)
それにサラサラな黒髪ロングヘアも相まって大和撫子という言葉が似合うような美しい女性だった。そんな奈美さんに似合いそうな服といえば……。
「うーん、何となく今イメージしてみたんだけどさ……ぶっちゃけ奈美さんってどんな服でも完璧に着こなせそうだよな」
「え? そ、そうかな?」
「うん、そうそう。例えばシンプルに可愛らしいスカートとかゆるふわなワンピースとか似合うだろうし、ギャルっぽい感じのミニスカとかショート丈の服もめっちゃ似合うだろ。それに凪がよく好んで着てるライダースのジャケットとかスカジャンみたいなカッコ良い感じの服も絶対に似合うだろうな」
「そ、そっか。大樹のイメージとしては何でも似合いそうって思ってくれるんだ。でもわた……じゃなくて、姉さんはスカートとかショートパンツみたいな足を結構露出するような服装はあんまり着ないんだよね」
奈美さんの似合いそうな服をイメージしながらそう言っていくと、凪は奈美さんの新しい情報を教えてくれた。どうやら奈美さんは足を露出するような服は着ないようだ。
「へぇ、そうなんだ? 奈美さんはスカートとかショートパンツみたいなのは嫌いだったりするのかな?」
「いや、全然嫌いとかじゃないよ。むしろ姉さんはそういう女の子らしい服とか可愛い服は大好きだよ。そもそも学生の頃は毎日制服でスカートを着用して登校してたわけだしね」
「ふぅん、奈美さんは女の子らしい服が普通に好きなんだ? でもそれじゃあどうして自分でそういうのを着ないのかな?」
俺はキョトンとした表情をしながら凪にそう尋ねていってみた。
「いや、そんな大した理由ではないんだけど……ほら、姉さんって身長高いでしょ? それに姉さんは学生時代は運動系の部活を毎日のようにやってたんだ」
「へぇ、そうなんだ? あ、それじゃあ姉弟揃って運動部に所属してたんだな」
「う、うん。そうなんだ。それでまぁ、なんというか……姉さんって部活をしてない今でもトレーニングを続けてるせいで全体的に筋肉が付いちゃっててね、それで今でも足とかふくらはぎとかに筋肉がついちゃってるから、そういうのが女の子っぽくないって事で……それで恥ずかしいから、いつもジーパンとか長いズボンを着ているんだよ……」
「なるほどな。まぁでもそういう事だったら俺は奈美さんには自分の好きな服を着て貰いたいって思うけどなー」
「……え?」
俺がサラっとそんな事を言っていくと、今度は凪の方がキョトンとしながら俺の顔を見ていった。
「いや、奈美さんが女の子らしい服が嫌いなタイプなんだったら俺もそれは尊重するよ? でもそうじゃなくて奈美さんは女の子らしい服が普通に大好きなんだろ?」
「う、うん。それはまぁ……」
「だろ? それなら俺は奈美さんには好きな服を来て貰いたいって思うな。それに奈美さんは女の子らしい服が嫌ってわけじゃなくて、好きなんだけど着るのは恥ずかしいっていう気持ちなら……それは多分慣れの問題だよ。多分一回そういう服を着てみたらすぐに慣れていくと思うよ。だからそんな険しく考え込まなくても大丈夫だよ」
「だ、大樹……」
俺は凪に向かって優しく笑みを浮かべながらそう言っていった。
凪の話を聞いてる限りだと、奈美さんは勇気を出すための一歩を欲しがってるように感じたので、俺はそんなエールを奈美さんに送っていった。
「はは、というかそもそも奈美さんはどんな服装でも絶対に似合うと思うからさ、だから安心して自分の好きな服を着てくださいって伝えといてくれよ」
「……うん、わかった。きっと姉さんも大樹からのアドバイスを貰えて嬉しいと思ってくれるはずだよ。だから本当に……ふふ、ありがとね大樹」
「あぁ、そう言ってくれると俺も嬉しいよ。あ、そうだ。それじゃあさ、今度のドライブに良かったら奈美さんも誘ってみるってのはどうだ?」
「ふふ……って、えっ!?」
「ほら、今度のドライブは服屋のアウトレットに行く事になってるじゃん? だからその日に奈美さんの着たい服とか似合いそうな服とかを三人で見ていくってのも面白いんじゃないかな? 俺も奈美さんとは初対面じゃないし、もし奈美さんさえ良ければ三人でドライブに行きませんかって言っといてくれよ」
俺はそんな面白そうな案を思いついたので凪にすぐに提案をしていってみた。すると何故か凪は急に動揺をし始めていった。
「い、いや、そ、それはその……ま、まぁ聞いてはみるけど……で、でも姉さんもお仕事を忙しいから……だ、だからちょっと厳しい気もするなぁ……」
「あー、そっかそっか。そういえば奈美さんって社会人なんだよな。あぁ、わかったよ。ま、でもダメもとで良いから聞いといてみてくれよな?」
「う、うん、わ、わかったよ……」
という事で俺は凪にそんなお願いを伝えていった。でも何故だか凪はそれから終始動揺しっぱなしなんだけど……急にどうしたんだろう?
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