第21話:凪に飲み物を渡していく
それからしばらくして。
「ただいまー。待たせちゃったか?」
「おかえり。ううん、全然待ってないよ」
俺は自販機で買い物をしてから凪の待つベンチ前に戻ってきた。
「そっかそっか。それじゃあ、ほら、これ。凪にやるよ」
「え? これは……ホットココア?」
「あぁ、そうだよ。まだ温かいから早めに飲んじゃってくれよ」
俺はそう言って凪にさっき自販機で買ってきたホットココアを凪に手渡していった。
「あ、ありがとう? でもどうして?」
「いやまぁ何というか、俺の友達にも時々お腹が痛くなるヤツがいてさ。それでソイツはいつもお腹が痛い時はホットココアが飲みたいって言ってきてたんだ。だから凪もココアが飲みたいかなって思って買ってきたんだよ」
まぁそれは友達じゃなくて彼女の話なんだけど。
菜々美と付き合ってた時にアイツも時々お腹が痛いっていう時があったんだ。それで菜々美はお腹が痛くなると毎回ホットココアを俺に作れって命令してた事を思い出したので、俺はホットココアを買ってきたというわけだ。
「……そっか。うん、ありがとう。僕もちょうどホットココアが飲みたいなって思ってた所だから凄く嬉しいよ」
「そっか。それなら良かった。あとついでにこれもやるよ。ほら」
「あ、ホッカイロ。うん、ありがと。大樹」
「おうよ」
という事で俺は使いかけのホッカイロも凪に渡していった。そしてそのまま俺もベンチに座っていって、一緒にホットココアを飲みながら一息ついていった。
「んく、んく……ぷはぁ。ふふ、ありがとね、大樹。これで体調も少しはよくなってきそうだよ」
「おう、それなら良かった。まぁでも体調悪い時はあんまり無理すんなよ? 体調悪くてしんどい時くらいは女子に話しかけられても断れよな」
「うーん、それはそうなんだけど……でも話かけられたら何だか嬉しくなってついつい応えちゃいたくなるんだよね」
「なるほど。まぁでもそうだよな。凪って人当たりの良い性格してるもんなぁ……って、あ、そうだ。それじゃあしんどい時とかに女子に話しかけられたらさ、その時は俺の名前を使って逃げてくれても良いぜ?」
「おー、それはナイスアイデアだね! ふふ、だけど大樹の名前を使い過ぎると周りの女子達から大樹が嫌われちゃうかもしれないよ? ほら、さっきの女子達みたいにさ?」
「あー……やっぱりさっきの女子達からはムっとされちまったかな? まぁでもそりゃあそうだよな。それじゃあ今度あの子達と話す機会があったら俺の代わりに謝っといてくれないか?」
「うん、もちろんだよ。まぁ本当に怒ってるわけじゃないからそんなに気にしないで大丈夫だよ」
凪は笑いながらそう言ってきた。そしてそのままホットココアを飲みながら続けてこう言ってきた。
「んく、んく……ぷはぁ。ふふ、でも大樹ってやっぱり優しいよね。僕が体調が悪いのにすぐに気が付いてくれるし、それでココアとかホッカイロとかもくれたりするんだからさ……」
「おうよ。俺はこう見えて結構優しいんだぜ? はは、だからもうちょっとくらい女子達からモテても良いと思うんだけどなぁ」
「大丈夫だよ。大樹ならすぐにモテるよ。あ、そういえばさ……大樹ってどんな女の子が好きとかってあるの? 女の子のタイプとかさ?」
「え? タイプ?」
「そうそう。物静かな女の子が好きとか、今時のギャルっぽい女の子が好きとかさ……大樹ってどんなタイプが好きなのかなって思ってね。今までそういう女の子のタイプとか聞いた事ないよね?」
「あー、そういえばそうだな。今まで彼女がいたからそんなタイプの話なんて全然してこなかったよな。うーん、そうだなぁ、俺の好きなタイプかぁ……」
そんな凪の純粋な疑問に対して、俺は腕を組みながらしっかりと考えていった。俺ってどんなタイプの女の子が好きなんだろう?
「うーん、好きなタイプか……あ、そうだ!」
「お? 何か思いついた感じかな?」
「あぁ、そうだな! そういえばめっちゃドンピシャなタイプの女性につい最近出会ったばかりだわ!」
「へぇ、最近出会ったの? それはどんな人だったの? もしかして僕も知ってる人だったりするのかな?」
「あぁ、そうだな! お前も知ってる人……ってかお姉さんだよ!」
「……え? ぼ、僕のお姉さん……?」
「そうそう! 凪のお姉さんの奈美さん! あの人めっちゃ美人だし、人当たりも良くて優しいじゃん? 俺ああいう大人の優しいお姉さんがめっちゃ好きだなぁ!」
「へ、へぇ? そ、そうなんだ……?」
俺はそんな事を凪に言っていった。
だって俺は今まで同世代のわがままな性格の幼馴染とずっと付き合ってきていたんだ。
だからその反動で今の俺は奈美さんのような大人の落ち着いた感じと優しさを兼ね備えた女性が物凄くどストライクになっている事に気が付いたんだ。
「あぁ、そうなんだよ。だからまた奈美さんに会いたいなぁ……って、あれ? どうした凪?」
「え……? どうしたって……何のこと?」
「いや、凪の顔さ……何でか知らないけどめっちゃ赤くなってるぞ?」
「え……って、えぇっ!?」
俺はそう指摘していくと凪は物凄くビックリとしていった。そして何故かわからないけど凪の顔は気が付いたらかなり赤くなっていた。
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