第20話:凪が女の子にめっちゃ話しかけられてる
とある平日の昼休み。
「うん?」
―― ワイワイ……ガヤガヤ……
食堂で昼飯を食べ終えてから外をノンビリと歩いていると、何だか賑やかな声が聞こえてきた。女の人の声が沢山聞こえてきている。
「んー、なんだろう? って、あぁ、そういう事か」
賑やかな声が聞こえる方に視線を送っていくと、そこでは凪が沢山の女の子に喋りかけられていた。やっぱりイケメン王子という異名は伊達じゃないな。
(あはは、女子達からモテモテだなんて本当に凪が羨ましいなー……って、あれ?)
その様子を見てると俺はちょっとだけ凪に違和感を感じた。あの感じはひょっとして……。
「あ、そうだ! ねぇねぇ、見てみて凪君! 実は前の休みに秋冬モデルの新作のバッグを買ったんだー!」
「わぁ、とってもオシャレなバッグだね。山下さんにすっごく似合ってるよ。あ、それとネイルも新しくしたんだね? 前の青色のネイルも可愛かったけど、今回のネイルも山下さんに凄く似合ってて良いね」
「わわ! ネイルの事もちゃんと気がついてくれたんだ! あはは、嬉しいなー! こういうの彼氏は気づいてくれないから悲しいんだけど、凪君はちゃんといつも気づいてくれるから本当に嬉しいよー!」
「あー、ズルいズルい! 美咲ばっかり凪君に褒められてズルいよ! ねぇねぇ凪君! 私の服もちょっと見てよー!」
「話の途中で悪いけどさ、ちょっと良いかな?」
「……え?」
「……え?」
「え? って、あ、大樹」
俺はそんな女子達の楽しそうな会話に無理矢理入っていった。もちろん周りの女子達からは変な目で見られてしまった。
「え? ちょっと、誰この人? 誰かの友達?」
「さぁ? 私は知らないけど?」
「俺はそこにいる凪の友達なんだ。って事でさ、ごめんだけどちょっと凪を借りても良いか?」
「はぁ? いや、無理なんですけど? アタシ達が凪君と今喋ってるのが見えないの?」
「そうそう。凪君は皆の王子様なんだから、そういう割り込みは止めてくれない?」
「だからごめんって。また今度凪と話してもらってくれよ。そんじゃあ、いくぞ、凪」
「え? あ、う、うん……?」
「あ、ちょ、ちょっと!」
―― ぎゅ……
という事で俺は凪の手を握りしめながらその場を脱出していった。そしてちょっと離れた場所まで行ってから俺は手を放していった。どうでも良いんだけど何だか凪の手は凄く柔らかかったな。
「ふぅ、ここら辺で良いかな。あ、ごめんな、ずっと凪の手を握っちゃってさ」
「ううん。大丈夫だよ。でもどうしたのいきなり?」
「あー、いや、なんというか……もしかしてなんだけどさ、凪って今具合悪かったりしないか?」
「……え? ど、どうして?」
俺がそう尋ねていくと、凪はちょっとビックリとしたような顔をしてきた。
「いや、何となくとしか言えないんだけど……何だか凪の顔色が悪そうだなーって思ってさ。もし違ったらすまん。有難迷惑だったか?」
「えっ? う、ううん、そんな事はないよ。実はちょっと……体調が悪いんだ」
「そっか。やっぱりそうだったんだな」
何というか言語化するのは難しいんだけど、俺が菜々美と付き合ってた時に菜々美も体調が悪い時に今の凪と同じ顔をしてる事が多かったんだ。
ふと俺はそれを思い出して、もしかしたら凪も体調が悪いんじゃないかと思ったんだ。そしたら予想通り凪は体調が悪かったようだ。
「う、うん、そうなんだ。でもよくわかったね? 僕が体調悪いって。そんなに顔に出てたかな? でも大樹以外には誰にも指摘されなかったんだけどな……」
「はは、仲良い親友の顔色の変化くらいわかるもんさ。それで? 体調はどこら辺が悪いんだ?」
「え、えぇっと……まぁ何というか……ちょっとお腹らへんが痛くてね……」
「ふぅん、なるほど? はは、もしかして賞味期限切れの食べ物でも食っっちゃったのか?」
「あ、い、いや、そういう痛さじゃなくて……まぁ何て言うか鈍痛みたいな感じかな……? まぁ食当たりとかそういうタイプの痛さではないよ」
「あー、なるほど。そういうタイプの痛みか。それは長引くタイプだから結構辛いよな……あ、そうだ。それじゃあちょっとそこのベンチに座っててくれよ」
「え? う、うん? わかったよ?」
「よし、座ったな。それじゃあちょっくら行ってくるわ!」
「え? あ、だ、大樹?」
という事で俺は凪にそう言ってから、近くの自販機を目指して全力で駆けだしていった。
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