第16話:奈美さんが迷惑な男性客に絡まれてる
それから程なくして。
「それでは会計700円となります。はい、ちょうど頂きますね。ありがとうございます」
オススメの紅茶を飲んで休憩を終えた俺は会計をお願いしていっていた。会計も奈美さんがやってくれていた。
「はい、こちらこそありがとうございます。凄く美味しい紅茶でした」
「ふふ、それなら良かったです。紅茶は店長が毎日厳選した茶葉を使用しているんですよ。だから毎日オススメの紅茶が違うので、良かったらこれからも飲みに来てくださいね」
「へぇ、それは凄いですね。はい、わかりました。それじゃあ今度は凪も誘って二人で来ますね!」
「えっ? あ、いや、それはちょっと……弟が来るのはちょっと恥ずかしいので、なのでそれだけは勘弁して頂けると助かります……」
「あ、そうですよね。やっぱり身内に見られるのは恥ずかしいですよね。はい、わかりました。それじゃあまた今度必ず飲みにきますね!」
「すいませーーん。おねーーさん、注文良いっすかー??」
「はい、かしこまりました。ふふ、それじゃあまた来てもらえるのを楽しみにしてますね? それでは失礼致します」
そう言って奈美さんはスカートの裾を手に持ちながら華麗にお辞儀をしていった。やっぱりこの丁寧な仕草を見ると本物のメイドさんに見えてしまうな。
(よし、これはまた近い内にこの喫茶店を利用させて貰う事にしよう!)
という事で俺はそんな事を思いながら財布をポケットに入れてお店から出ようとしたその時……。
「ちょ、ちょっと……止めてください……」
「ん?」
するとその時店内から奈美さんの困ったような声が聞こえてきた。奈美さんはお客さんの注文を聞きに行ったんだと思ったんだけど……何かあったのかな?
俺はそう思ってもう一度店内を見ていった。
「お姉さんめっちゃ美人だね。彼氏とか募集してない? 良かったら連絡先教えてよー」
「こ、困ります。そういうプライベートな事は……」
「あはは、そんな固い事言わないでさー。とりあえずこの後一緒にカラオケとか行こうよー」
すると奈美さんはタチの悪い二人組の男性客に絡まれていた。やっぱり奈美さんは美人だからこういう迷惑な客に普段から絡まれたりするんだろうなぁ……。
(って、今はそんな事を冷静に分析してる場合じゃないな。さっさと助けに行かなきゃ)
「ねぇ、いいじゃん? とりあえず連絡先とか教えてよ。それでバイト終わりに一緒に遊びに行こうよー!」
「だ、だからそういうのは無理です……」
「えー、何で? ってか俺達はお客様なんだよ? お店にとってお客様ってのは神様なんじゃないのかなー?」
「そうそう! お客様のお願いなんだから店員さんはちゃんと聞かなきゃ駄目でしょー? あははー!」
「ちょっと?」
「あははー……って、ん?」
「え? だ、大樹……くん?」
俺はその男性客の元に近づいて声をかけていってみた。近くまで来てみるとその男性客の年齢は若そうだった。おそらく俺よりも年下だろうな。
そんな事を冷静に判断していると、目の前の男性客は訝しげな表情で俺の事を見てきた。
「ん? 何だよお前??」
「男になんか興味ねぇんだよ。俺達は今大事な話をしてる所なんだから邪魔すんなよな」
「店員さんが怖がっているんですから、そういうのは止めた方が良いと思いますよ?」
「はぁ? うるせぇなー。邪魔なんだからさっさと消えろよな」
「いや流石にこのまま消えるのは出来ないですね。むしろアナタ達の方がこのお店にとっては邪魔になってると思いますよ?」
「はぁ? 何言ってんだよ! ってか何様だよテメェ! 俺達は客だぞ!?」
男性客はガンと飛ばしながら俺に向かってそう怒鳴ってきた。
「いやいや、お客さんだからといってもマナーというものがありますよ? それに他にもお客さんがいるんだから迷惑になる行為は控えた方が良いと思いますよ。それともどうしますか? 警察を呼んで最後までやりますか? でも止めといた方が良いと思いますよ?」
でも俺はそんな怒号を受けても冷や汗一つかかずにそう言い返していった。男性客達は言い返されるとは思わなかったようでキョトンとした顔をしだしていった。
「は、はぁ? 止めといた方が良いってどういう事だよ?」
「いや、実は私……こういう者なんですよ」
「は……って、はぁ!?」
俺はそう言って財布からとある名刺を取り出した。それは俺の名刺……ではなく、菜々美が所属してるモデル事務所の担当弁護士の名刺だ。
菜々美の素行の悪さのせいで俺は今までに何回か警察に行く事があった。それでその時にモデル事務所の弁護士から名刺を貰った事があったんだ。その時の名刺を俺はちらつかせていった。
「な、何だよお前……弁護士なのかよ?」
「えぇ、そうです。それでどうしますか? これ以上お店に迷惑をかけるというのなら業務妨害で訴えを起こしても良いんですよ? でもそんな事をしたらアナタ方の親御さんに迷惑がかかると思いますけどね?」
俺は凄く真剣な表情をしながら目の前の男性客にハッタリをかまし続けていった。
もちろん俺は弁護士じゃねぇし、普通の大学生だ。だけど今まで菜々美と付き合ってきたおかげで俺のメンタルは鋼以上になっている。
そして目の前にいる男性客はおそらく俺よりも年下だ。という事でこんなの堂々としてたら絶対にバレないだろうと思ってそのまま強気に出ていってみた。そしたら案の定……。
「う……そ、それは……こ、困るよ……」
「わ、わかったよ。俺達が悪かったよ……もうこのまま店から出て行くから勘弁してくれよ……」
「はい、わかりました。それではお気をつけてお帰り下さい」
俺のハッタリが凄く効いたようで、二人組の男性客はしょんぼりとした様子で店から出て行った。まぁ何はともあれ穏便に事が済んで良かった。
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