第14話:休みの日に出かけていると

 土曜日の昼下がり。


 家で使ってた炊飯器が壊れたので新しい物を買うために、今日は都心の家電量販店にやって来ていた。


「いやー、かなりお買い得な商品があって良かったな」


 そして俺はそう言いながら大きな紙袋を持って家電量販店から出ていった。


 ちょうど型落ち商品が残ってるという事で大幅値引きの状態で購入する事が出来たんだ。本当にラッキーだったな。


「よし、それじゃあ財布に余裕も残ってるし、何か飲み物でも飲んでから帰る事にしよう」


 そう決めた俺は早速スマホを取り出して近場の喫茶店やカフェをどんどんと検索していった。


「お、なんだかここの喫茶店の評価めっちゃ高いな! 評価☆4のお店とかかなり凄いな!」


 検索してみるとここからすぐ近くに高評価を得ている喫茶店があるようだ。名前は『エトワール』というらしい。


 評価コメントを見てみると、店内がとてもクラシックな感じで落ち着いていて素晴らしい。紅茶も香りの良い茶葉を使っていてとても美味しい。さらに店員さんの服装も凄く凝っていて素晴らしいなど、沢山の肯定的なコメントが書かれていた。


「へぇ、何だか凄く良さそうなお店なんだな。だけど“凄く凝った服装”ってどういう意味だ?」


 俺は疑問に思いながらそう呟いていった。凝った服装って言っても、喫茶店なんだから私服にエプロンを着てる感じじゃないのかな?


「うーん、何だかそのコメントも気になるし……よし、それじゃあこの喫茶店に行ってみるとするかな!」


 という事でその喫茶店に凄く興味が湧いてきたので、早速俺はその喫茶店を目指して歩いて行ってみた。


◇◇◇◇


「おー、ここがエトワールかぁ」


 家電量販店から歩いて5分くらいでその喫茶店に辿り着いた。確かに外観は昔ながらの昭和レトロ風な喫茶店に見えた。これは確かに隠れた名店って感じがするな。


「よし、それじゃあ早速……」


―― カランコロンっ♪


 早速その喫茶店の扉を開けていくと、その扉に付けられていた鈴が鳴り出していった。おそらく店員さんがこちらまで来てくれるんだろうな。


 という事で俺は店員さんを待ちながら辺りをキョロキョロと見渡していった。


「うん、何だかやっぱり良い雰囲気の喫茶店だな」


 店内はそこそこ広めになっていて、昔ながらの昭和レトロ風という感じだった。何となくプリンとか美味しそうなイメージがある。


 そんな感想を思いながらキョロキョロと辺りを見渡し続けていると、店の奥から店員さんがパタパタと俺の方へと近づいてきた。


「いらっしゃいませ。何名様でいらっしゃ……えっ?」

「あ、はい。一人で……って、えっ!?」


 店員さんに声をかけられたのでキョロキョロとするのを止めて店員さんの方に顔を向けていくと……俺は物凄い衝撃を受けてしまった。


(す、すごいっ! 本格的なメイドさんじゃん!)


 店員さんは黒いロングスカートに白いエプロンが特徴的なクラシックタイプのメイド服を着こなしていた。


 しかも見た目からしてかなり高級な布を使用しているのが見てわかるし、メイド服も店員さんの身体にピッタリに作られているようだ。


 という事はもしかしてこれって……市販のメイド服じゃなくて自家製のメイド服なんじゃ?


(あ、“凄く凝った服装”ってそういう事か!)


 さっき見たレビューコメントにそんな事が書いてあった事を思い出した。なるほどな、確かにこれは凄く凝っているってレビューの感想に書くわけだよ。


「これはすごいなー。って、あれ? どうかしましたか店員さん? 何だか固まってますけど?」

「……えっ? あ、い、いや、その……」


 気が付くと店員さんは何故かビックリとしたような顔をしながら固まってしまっていた。


 そして今更店員さんの顔を見てみたんだけど、黒髪ロングのとても綺麗な女性だった。おそらく同年代の人のようだ。


(……って、あれ? でもこの女の人……俺どっかで見た記憶が……)


 俺はその時、何故かこの店員さんを知っているような気がしてきた。でもこんな美人な女性を俺は知ってたら忘れるわけがない。


(うーん、それじゃあ……って、あっ)


 その時、ふと店員さんの胸に苗字が刻まれたネームプレートが付けられていた。そこには“悠木”という苗字が書かれていた。


 ……って、あれ? 悠木? それって……。


「……あぁっ!」


 その瞬間、俺は気が付いた。


 俺はこの女性に似た人を知ってるような気がしたんだけど……そうだよ。この店員さんは俺の友達である“悠木凪”に雰囲気が滅茶苦茶似てるんだ!

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