第12話:翌日の朝

 翌日の朝。


「はぁ……頭いてぇ……」


 俺は頭を抑えながら大学への通学路をトボトボと歩いて行っていた。


 昨日の飲み会は凄く楽しかったんだけど、でも調子に乗っていつも以上にお酒を飲んでしまった。だから今日は完全に二日酔いだ……。


 しかも調子に乗って飲み過ぎたせいで、昨日の飲み会で話した内容もほぼ忘れてしまった。変な事とか言ってなかったらいいんだけど……。


「はぁ、今度からはもうちょっと自制しなきゃだなぁ……って、あれ?」


 そんな事を呟きながらトボトボと歩いていると、俺の前方を歩いている凪の姿を見つけた。なので俺は早歩きをしながら凪に近づいて行った。


「おっす、凪」

「え? って、あ、あぁ、おはよう、大樹」

「あぁ、おはよう。良かったら一緒に大学まで行こうぜ?」

「うん、もちろん良いよ」


 という事で俺は凪に許可を貰ったので、そのまま一緒に大学まで歩いて行く事にした。


「いやー、昨日の飲み会は凄く楽しかったよな! 昨日は集まってくれて本当にありがとな!」

「うん、僕も凄く楽しかったよ。ふふ、でも昨日はだいぶお酒飲んでたけど大丈夫だったのかな? 二日酔いとか大丈夫そう?」

「あー、いや実はほんのちょっとだけ二日酔いだよ、あはは……。あとちょっと恥ずかしいんだけどさ……俺、昨日は調子乗って飲み過ぎちゃったせいで、昨日の話した内容ほぼ覚えてないんだよな……」

「……え? そうなの?」

「あぁ、そうなんだ。だから昨日の俺は調子乗って何か変な言動とかしてなかったか? もし変な言動とかしてたらマジですまん……」

「ううん。そんな事は一切してなかったから安心して良いよ。あ、それじゃあ……僕の座り方についても覚えてたりは……?」

「座り方? 何だっけそれ? 何か変な座り方でもしてたのか?」

「あ、う、ううん! 何でもないよ。全然気にしないで大丈夫だから!」

「? そ、そうか? まぁ凪がそう言うなら気にしない事にしとくわ」


 俺がそう言うと凪は慌てた様子で気にしないでくれと言ってきた。


 でも今の凪の様子からして、もしかしたら俺は何か変な事をやらかしちゃった可能性がありそうだな……まぁ普通に怖いから聞くのは止めておこう。


(うーん、それじゃあ何か別の話で話題を反らさなきゃだな。でも何か良い話題は……って、あ)


「あ、そうだ。そういえば俺は今度の土日なら空いてるんだけどさ、凪も暇なようなら良かったらドライブに行かないか? そんで何か美味いもんでも食いに行こうぜ?」

「え? あ、ごめん。誘ってくれて嬉しいんだけど、実は今度の土日はバイトが入ってるんだ……」

「あ、そうなのか。うん、わかった。それじゃあまた今度別の日に誘うよ」

「うん、ごめんね」


 俺がドライブの提案をしていくと凪は申し訳なさそうな顔をしながら断ってきた。なので俺は笑いながら続けてこう言っていった。


「いやいや、そんな気にしなくて良いよ。というか凪ってバイトしてたんだ? 凪はどんなバイトをしてるんだ?」

「僕のバイトは飲食系……というか、まぁ喫茶店だね。親戚の人がオーナーをしてるお店なんだ。まぁそのせいで人手が足りない時は僕にバイト入ってくれっていつも突然連絡してくるんだけどね。本当にもう……身内だからって色々とこき使ってくるから大変だよ」

「へぇ、親戚のお店なんだ。確かに身内が上司だと色々と無茶ぶりとかしてきそうで大変そうだなー」

「はは、本当にそうなんだよ。全く困っちゃうよね」


 凪は苦笑いをしながらそんな事を言ってきた。その様子からしてだいぶそのオーナーの親戚にこき使われてるんだろうな。


「なるほどなー。あ、そうだ。それじゃあせっかくだしさ、今度凪の働いてるお店に行かせてくれないか? オススメの料理とか飲み物とか沢山注文するよ!」

「え……えっ!? 大樹が来るの!? い、いや、それはその……ちょっと申し訳ないんだけど、出来ればそれだけは止めて貰えると助かるかな……」

「え? どうしてだよ?」

「い、いや、やっぱりその、友達に働いてる所を見られるのってすっごく恥ずかしいからさ。それで何かミスとかしちゃってお皿とか割っちゃったりしたらオーナーに怒られるし……だ、だからその、それだけは許してくれないかな? た、頼むよ! この通りだから!」


 そう言って凪は全力で頭を下げてきた。その様子から絶対にバイト先には来てほしくないという強い意思を感じ取った。


 まぁでも、そこまで言われたら流石にバイト先に行くのは可哀そうだよな。という事で……。


「そ、そっか。まぁわかったよ。凪がそこまで言うなら行くのは止めておくよ」

「う、うん! ありがとう!」

「お、おう?」


 という事で俺は凪にそう伝えていった。すると凪は一転して満面の笑みを浮かべながら感謝の言葉を送ってきてくれた。


(ま、確かにバイト先に友達が茶化しに来たりしたらめっちゃ恥ずかしいっていう気持ちは十分わかるしな)


 だけど凪がバイトしてる喫茶店とか女子からの人気が凄そうだよな。ウエイター姿の凪とか女子からしたら凄くテンション上がりそうだし利益も増えそうだよな。


(はは、そりゃあ親戚のオーナーもイケメンウエイターの凪をこき使うわけだよなー)


 という事で俺は凪のウエイター姿を頭の中で勝手にイメージしながら、その後も俺は凪と一緒にノンビリと雑談をしながら大学へと向かって行った。

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