第11話:凪と楽しくお酒を飲んでいく

 そんなわけで皆で楽しく飲み会を始めてから数時間が経過した頃。


「あー、すまん。俺そろそろ帰るわ。明日提出期限のレポートがあるから家で仕上げないといけないんだ」

「俺もレポート課題あるからそろそろ帰らないとだ。すまんー」


 春樹と俊はスマホの時計を確認してそう言ってきた。


「あ、まじか。ってかレポート課題があったのに飲み会に参加してくれたのかよ。それは俺の方こそ本当にすまんかったな」

「はは、別に良いさ。レポート課題なんかよりも大樹と久々に飲み会を開く方が大事だしな」

「そうそう。だから大樹は気にすんなよー。これからも気軽に飲み会とか遊びに誘ってくれよな!」


 春樹と俊は笑いながら俺にそう言ってきてくれた。


 やっぱりこの春樹も俊も俺にとって最高の友達だよな。まぁ時々調子に乗って俺の事を全力で煽ったりもしてくるけど。


「そっか。わかった、二人ともありがとな。あ、凪はどうする? 凪も帰るか?」

「え、僕?」


 春樹と俊に感謝の気持ちを伝えていきながら、俺はもう一人の最高の友達である凪にも帰るかどうかを聞いていった。


 俺は大学近くのアパートで暮らしてるからいつまで飲んでても大丈夫だけど、凪はそうじゃないからな。そろそろ帰らないとマズいようなら今日の飲み会はこれで終わりにしなきゃだな。


「ううん、僕は明日は二限からだし、まだ大丈夫だよ。それに大樹もまだまだ飲み足りなそうな顔してるし今日は終電まで付き合ってあげるよ」

「本当か? はは、それは凄く嬉しいな。よし、それじゃあ今日は終電まで一緒にいような!」

「うん、もちろん良いよ」

「はは、良かったな大樹ー。それじゃあ今日はイケメン王子に思いっきり慰めて貰えよー?」

「あはは、イケメン王子に慰めて貰うって大学の女子達が聞いたら絶対に発狂するシチュエーションだよな。大学の女子達に今日の事はバレないようにしろよー? そんじゃあ、またな」

「おう、またなー」


 そう言って春樹と俊は今日の飲み会の代金を机の上に置いて居酒屋から出て行った。


 そして俺は春樹達を見送って一息ついていると、流石にお酒を飲み過ぎたようで何だか急に小便に行きたくなってきた。


「ふぅ……あ、すまん、凪。ちょっとトイレに行きたくなってきたから、少しだけ席を外しても良いか?」

「あぁ、うん、わかった。あ、お水も要るかな? もし必要なら店員さんに頼んでおくよ?」

「あー、サンキュー。めっちゃ欲しいわ。それもお願いして貰って良いか?」

「うん、わかったよ。それじゃあ頼んでおいとくから、大樹はトイレに行ってきて良いよ」

「おう、ありがとな」


 俺はそう言って座敷から立ち上がり、すぐにトイレへと向かって行った。


 そしてそれから程なくして。俺はトイレで用を足してすぐに座敷に戻ってきた。


「ただいまー。あ、お水もサンキュー。いやぁ、久々の飲み会は楽しいけど流石にちょっと酔っぱらっちまったよぉ……って、あれ?」

「おかえりーって、うん? どうしたの?」


 トイレから帰ってきた俺は凪の座っている姿を見てちょっと気になった部分があったので、俺はそれを指摘していった。


「へぇ? 凪ってそういう座り方出来るんだなー?」

「え? って、あ……!」

「お尻と太ももをペタって地面に付けて座れるなんてマジで凄いなー! 確かそういうのって女の子座りって言うんだっけ? 俺は身体固いからそういう軟体な座り方出来ねぇんだよな。あはは、やっぱり凪は運動神経が良いから身体も柔らかいんだなー!」

「え……あ、う、うん! そうそう! 僕昔からバスケとかやってたから他の人よりも柔軟性高いんだよ」


 俺は凪がお尻と太ももを地面にペタっと付けて座っているのが凄いなと思ってそんな事を伝えていくと、凪は慌てた感じになりながらそう返事を返してきた。


(……? 何で凪は動揺してるんだろう?)


 俺は何も変な事を言ったつもりは無いんだけど……ま、別にどうでもいっか。


「はは、やっぱり凪は色々と万能で凄いなー。運動神経抜群で優しくてイケメンなんて、そりゃあ凪は女子達からモテるわけだよなー」

「あはは、そりゃあどうも。でも大樹だって割と女の子から人気あるんだよ?」

「えっ!? マジで?」

「うん、マジマジ。さっき春樹達も言ってたけど、大樹って気さくで優しい男の子でしょ? だから大樹と交流した事のある女の子達は大樹に対して結構好意的な印象を持ってるっぽいよ?」

「へ、へぇ、そうなんだ? 女子達からそんな印象を持たれてるってのはちょっと嬉しいな」


 凪からそんな事を言われて俺はちょっと嬉しくなっていった。まぁ女子達からそんな風に思われてるって言われて嬉しくならないわけがないよな。


「うん、だから大樹は元カノさんと別れたばっかりでしんどいかもだけど、でも大樹だったらすぐに新しい彼女が出来るだろうから大丈夫だよ。だから早く元気だしてね」

「はは、凪にそんな応援をされると物凄く嬉しくなるなー。ま、でもしばらくは彼女とかそういうのはいいよ」

「え? そうなの? 大樹だって男の子なんだし彼女とかすぐに欲しいとかの願望はないの?」

「いや、そりゃあ彼女が欲しくないと言ったら流石に嘘になるけど、でも今は新しく彼女を作って青春を送るよりも、凪と一緒にこうやってしょうもない話をしながら盛り上がってる方が100倍楽しいからさ。だからいつも気さくに絡んでくれて本当にありがとな。俺は凪と友達になれて本当に良かったよ……」

「大樹……」


 俺は酔っぱらってる事を頼りにして、素面だと恥ずかしくて中々言えない感謝の気持ちを凪に伝えていった。すると凪はちょっとだけビックリとした表情を浮かべていった。


 でもそれからすぐに凪はいつも通り優しく微笑みながら俺にこう言ってきた。


「ふふ、そんなの僕の方こそいつもありがとうだよ。だからこれからもずっと仲良くしようね?」

「あぁ、もちろん。これからもよろしくな」


―― チンッ


 俺達はお酒の入ったグラスを手に持って再び乾杯をしていった。


 そしてその後も俺達はしょうもない話で盛り上がっていきながら、終電まで飲み会を楽しんでいった。

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