第9話:健人君とラブホで楽しくお話していく(菜々美視点)

 土曜日の深夜。ラブホにて。


「あー、凄く気持ち良かった。菜々美はどうだった?」

「うん、私もすっごく気持ち良かったよ。今日も気持ち良くしてくれてありがとね、健人君」


 健人君との楽しくエッチをし終えた後、私達はホテルのベッドに横たわりながらそんなピロートークを繰り広げていっていた。


「はは、俺の方こそ気持ち良くしてくれてありがとうだよ。それにしても俺達ってマジで身体の相性バッチリだよなー」

「もう、健人君はすぐそう言う事いうんだから。本当に健人君はエッチだなー」

「悪い悪い。でも菜々美だってエッチ好きなんだから別に良いだろ?」

「ふふ、まぁね。健人君とのエッチは最高に気持ち良いから大好きだよ」

「そっかそっか。菜々美にそう言って貰えるのは凄く嬉しいよ」


 私がそう言っていくと健人君は嬉しそうに笑みを浮かべながら私の事をぎゅっと抱きしめてきてくれた。私はとても幸せな気持ちになっていった。


 そしてそれからしばらくは他愛無い話をしながら盛り上がっていると、急に健人君はハッとした表情をしながら私にこう言ってきた。


「あ、そうだ。そういえば菜々美さ、何か俺に伝えたい事があるんじゃなかったっけ?」

「え? あぁ、うん、そうそう! 健人君に伝えたい事があったんだ。ふふ、実は私ね、彼氏と最近別れたんだー」

「そうなんだ? それは何だか急な話だね。確か中学生の頃から付き合ってた幼馴染なんでしょ? 何で別れちゃったの?」

「うん、幼馴染の彼氏だよ。まぁ理由に関してはお互いの性格の不一致というか、まぁそんな感じで別れたのよ」

「へぇ、そうなんだ。まぁ性格の不一致じゃあしょうがないよね。あはは」


 私は幼馴染の馬鹿男と別れた事を健人君にしっかりと伝えていった。すると健人君は笑いながらそう言ってきてくれた。


「うんうん、本当にそうだよねー。まぁでもさ、これでようやく私もフリーになった事だし……もうこれからは良いよね?」

「え? これからはって……何が?」

「あはは、何がってわかってるでしょー? 私がフリーになったって事はさ、これからは堂々と私達は付き合えるって事だよ。だからこれからは正式にお付き合いしよ?」


 という事で私はいよいよ健人君に告白をしていった。あの馬鹿男と別れたおかげで健人君と付き合う事が出来るなんて最高過ぎる!


 ふふ、それにようやくモデル友達に私の彼氏を紹介出来ると思うと本当に嬉しい限りだ――。


「え? いや無理だけど?」

「……え?」


 そう思っていたのに……何故か私は健人君から告白を断られてしまった。私は断られるなんて思いもしなかったので、頭の中が一気に混乱としていった。


 でも私は混乱としながらも健人君に断られた理由をすぐに尋ねていった。


「え、えぇっと……いや、なんで無理なの?」

「何でって言われても、俺普通に彼女いるしさ」

「……は? い、いま……なんて言ったの?」

「いや、だから俺も彼女がいるんだって。だから菜々美とは付き合えないよ。もしそんな事したら二股になっちゃうだろ?」

「は……はぁっ!?」


 それは衝撃的な発言だった。私は驚愕のあまり大きな声を出してしまった。すると健人君も驚いた表情を浮かべ始めていった。


「うわ、ビックリした。急にどうしたんだよ、菜々美?」

「いや、どうしたも何も……アンタに彼女がいるなんて聞いてないんだけど!?」

「あれ、言ってなかったっけ? 菜々美と知り合った最初の方にチョロっと言った気がするんだけどなー」

「ふ、ふざけないでよ! 今まで私と散々エッチしておいて……それは全部遊びだったっていうの!?」

「え? いや、そうだけど? というか菜々美だって俺とは割り切った関係で遊んでたんじゃないのかよ?」

「は、はぁ? いや何言ってんのよアンタ??」

「だって菜々美も今までずっと付き合ってた彼氏がいたんだろ? それなのに彼氏とじゃなくて俺と何度もエッチしてきてたじゃん? それは世間一般では割り切った関係って言うだろ?」

「う……そ、それは。で、でも彼女がいるのに他の女子をエッチに誘うなんて……そんなの最低な行為じゃないの!」

「いや、彼女にはちゃんと公認貰ってるし」

「え?」


 私は声を荒げながらそう言い放つと、健人君はキョトンとした表情でそんな返事を返してきた。


「い、いや、どうして彼女から公認なんて貰ってるのよ?」

「俺の地元ってここら辺じゃなくてめっちゃ田舎の地方なんだよ。それで俺の彼女は今もその田舎の地方に住んでるんだ。でもモデルの仕事をしてると地元の田舎に帰省する事なんて中々出来ないし、彼女に東京まで何度も来てもらうのも大変だろ? だから今まで俺達はずっと遠距離で恋愛してんだよ」

「は、はぁ? それで?」

「それでまぁ彼女とずっと遠距離なのは凄く辛かったんだけどさ、でもそれ以上に欲求不満を解消出来なかった事がもっと辛かったんだ。それで彼女に相談したんだけど、そしたら割り切ったエッチなら許すって言われたんだ。だから菜々美とは欲求不満を解消する割り切った関係として今まで会ってただけだよ。ってか最初にそう言わなかったっけ?」

「なっ……き、聞いてないわよ!?」


 私は絶句としてしまった。この男は自分の欲求を解消するためだけに私に近づいたと告白してきたんだ。そんなの理解できるわけがない。


「あれ、そうだったっけ? はは、まぁでも別にいいじゃん。だって菜々美も彼氏とずっと喧嘩ばっかりでエッチも出来なくて欲求不満だっていつも俺に愚痴をこぼしてたじゃん? それは流石に覚えてるでしょ?」

「う……い、いや、まぁそれは確かにそう言った事もあるけど……」

「でしょ? だから俺達はお互いに割り切ったセフレの関係が一番丁度良いわけじゃん? だからこれからもお互いの欲求不満を解消するセフレとして仲良くしようよ」

「……っ」


 この男は楽しそうに笑いながら平然とそんなイラつく事を言ってきた。私はそんな彼の様子を見て……。


「……帰る」


 私はそんな彼の様子を見て一瞬で冷めてしまい、すぐにベッドから抜け出して衣服を着始めていった。


「え、何で? もう深夜だから終電ないよ? それなら朝まで泊っていけば良いじゃん?」

「タクシー拾うから別にいい」

「えー、そんな寂しい事言わないで朝まで一緒にいようよ? それで朝になったらまたエッチしようよ。ほら、菜々美だって朝エッチ大好きじゃん?」

「朝からエッチなんてしんどい事好きな訳ないでしょ。そんな事するくらいなら家でお昼過ぎまでグッスリと寝てるわよ」

「あっそう? うん、わかった。それじゃあね。またエッチしたくなったら連絡するからねー」

「死ね!」


 私はヘラヘラと笑ってるこの男に向かってそう叫びながらさっさとホテルから出て行った。


 この男がこんなにも酷すぎるクソヤリチン野郎だとは思わなかった。家に帰ったら速攻で連絡先を消してSNSも全部ブロックしてやる……!


―――――――――

・あとがき


もちろん本編は大樹×凪ルートなので安心してください。


ですけど実は没プロットには大樹×菜々美の復縁ルートなんていうのも作ってありました。ここから菜々美が反省して選択肢を一つも間違えなかった場合のルートです。(つまり本編では菜々美は全く反省しないという事なんですけども……)


本編が完結した後で、もしも没プロットの反省&復縁ルートの方も読んでみたい読者様の声が多ければそちらのルートもオマケで書きますので、良かったらコメントで教えて頂けると嬉しいです。

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