第7話:帰り道の途中で新しく出来たお店を見つける

「あはは、やっぱりそうだよなー……って、あれ?」

「うん? どうしたの?」


 俺は凪と一緒に帰っている途中でとあるお店を見つけて足が止まった。


「いやあんな所にお店が出来てたなんて知らなくて驚いたんだよ。あれってタピオカ屋だよな?」

「あ、本当だ。昨日はまだやってなかったから、もしかしたら今日から開店したのかもしれないね」

「あぁ、多分そうかもしれないな」


 俺達の視線の先にはタピオカ屋が出来ていた。そして女子達が楽しそうな表情でそのタピオカ屋に並んでいた。


 ちょっと前にブームになっていたのは覚えてるけど、結局俺は一度も飲んだことがなかった。やっぱり行列が出来るって事は美味しいんだろうなぁ。


「タピオカって黒くて甘くてモチモチの丸っこいヤツだよな? 凪はタピオカって食べた事……ってか、飲んだ事あるか?」

「まぁ高校生だった頃に1~2回くらいは友達と一緒に飲んだ事あるよ」

「へぇ、なるほどな。ちなみにタピオカってどんな味するんだ? やっぱり美味しいのか?」

「え? どんな味って……もしかして大樹はタピオカ食べた事ないの?」

「あぁ、前にタピオカがブームになってたのは知ってるんだけど、でも実はまだ一度も食べてみた事はないんだよ」


 俺がそう言うと凪はちょっとだけビックリとした表情を浮かべてきた。


「へぇ、そうなんだ。でもそれはちょっと意外だね。今まで彼女さんがずっと居たのにデートとかでタピオカ屋さんとか一緒に行ったりしなかったの?」

「あー、まぁここ数年はデートとか全然してなかったからなぁ……だから彼女とタピオカ屋に行った事なんて一度も無かったんだ。興味自体は前々からめっちゃあったんだけどさ」

「なるほど。そういえば大樹って甘い物大好きだもんね? ふふ、そりゃあ甘い物好きとしてはタピオカに興味はあるに決まってるよね?」

「あぁ、そうなんだよ。だから前々からめっちゃ気になってたんだけど……でもタピオカ屋って女の人がめっちゃ多いから男が一人で買いに行こうとするのって中々に勇気がないと無理だろ? だから結局買えずに今に至るって感じだよ」

「確かにタピオカ屋って女子が多いイメージがあるもんね。それに今もあのお店に並んでるのは全員女子だしね」


 俺がそう言うと凪は笑いながら頷いてきた。そしてそのまま凪は続けて俺に向かってこんな事を言ってきた。


「ふふ、それじゃあさ……良かったら今日は試しにあのタピオカ屋行ってみる? 男の子一人で並ぶのが恥ずかしいっていうんなら、僕も一緒に並んであげるよ」

「マジで? それは凄く嬉しい提案だな!」

「うん、別にいいよ。大樹は飲んでみたいんでしょ? あ、でも僕は晩御飯が近いから飲まないけどね」

「え? 凪は飲まないのか?」

「うん、僕もちょっとくらいなら飲みたいけど、でもタピオカって結構カロリーがあるからね……」

「あー、なるほど。そういやタピオカって結構カロリー高いんだよな」


 タピオカの原材料って芋なんだよな。それに甘い物も沢山入ってるだろうから、そりゃあカロリーは高いに決まってるよな。


 でも凪を置き去りにして俺一人でタピオカを堪能するっていうのもなぁ……それに凪も少し飲みたいって言ってるし。


「うーん……あ、そうだ。それじゃあさ、良かったら一個のタピオカミルクティーを二人でシェアしないか?」

「え……って、えっ? で、でも、それって……」


 俺は凄く気軽な感じでそんな提案を凪にしてみた。すると凪は珍しく動揺しだしていった。いつもクールなイケメン男の凪にしては珍しい光景だ。


(うーん……あ、もしかして?)


 一つの飲み物を二人でシェアするって事は、つまりはストローの間接キスになるという事だ。もしかしたら凪はそういうのは嫌なタイプなのかな?


 まぁ今はご時世的にもそういうのは嫌だって思う人の方が多い世の中だしちゃんと確認しておこう。


「あぁ、もしかして凪は間接キスとかは無理なタイプか? それなら不躾な提案をしちゃって悪かったな」

「え? あ、ううん、僕も全然大丈夫だよ。高校生の頃とかバスケ部の休憩中に皆で飲み物を回し飲みとか普通にしてたしね。だから大樹が大丈夫なら全然良いんだけど……」

「そっかそっか。それなら俺も全然平気だし、せっかくだから一緒にシェアしようぜ?」

「ま、まぁ大樹がそう言うなら……うん、わかったよ」


 凪はちょっとだけ動揺しつつも俺の提案に賛同してきてくれた。でも別にそんな変な事を提案したわけじゃないんだけどな?


 だから急に凪が動揺としだした理由が全然よくわからないんだけど……ま、いっか。


「よし、それじゃあ味は何にするよ? ミルクティーとかジュースとか抹茶とかほうじ茶とか、何か色々な味があるらしいぞ?」

「あ、僕は好き嫌いとかないから、大樹が一番飲んでみたい物にしなよ」

「そっか。わかった。それじゃあやっぱり王道なミルクティーがいいな! よし、それじゃあ早速お店に並んでいこうぜ!」

「うん、わかった」


 という事で注文する飲み物を決めた俺達は早速その新しく出来たタピオカ屋に並んでいった。

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