第6話:大学の講義終わりに凪と出会う

 翌日の午後。


 今日の大学の講義が全部終わったので、俺はさっさと家に帰ろうと思って大学の中を歩いていると……。


「あれ? あそこにいるのは……」


 大学内のベンチに座りながら読書にふけっている凪を見つけた。ベンチで本を読んでるだけなのに凄く様になっている。そりゃあ女の子達から王子様って言われるわけだ。


「……うん? って、あぁ、大樹。お疲れ様」

「ん? あぁ、お疲れさん」


 凪の事をじっと見つめていたら、凪が俺に気が付いて手を振ってきてくれた。なので俺も挨拶をしながら凪の方に近づいていった。


「凪も今日の講義は全部終わった感じか?」

「うん、そうだよ。あ、良かったら隣に座りなよ? 立ったままじゃしんどいでしょ?」

「おぅ、ありがとな。それじゃあ失礼して……よっと。ふぅ、今日も一日大変だったなー」

「ふふ、お疲れのようだね?」

「あぁ、さっきまでレポート課題を延々と再提出させられてたんだよ。はぁ、マジでしんどかったなぁ……あ、そういえば凪は今は何の本を読んでたんだ?」

「これ? これはミステリー小説だよ。ちょっと前にテレビとかSNSで有名になってたやつだよ。ほら、これ」


 そう言って凪は俺に小説の表紙を見せてきてくれた。そのタイトル名には見覚えがあった。


「あー、そのタイトル名は俺も見た事あるな。SNSで凄くバズってたのを俺も見たな。やっぱり面白いのか?」

「うん、まだ途中だけどかなり面白いよ。良かったら大樹も読んでみる?」

「え? 良いのか? それじゃあ俺も読んでみたいな。凪が読み終わったら貸して貰っても良いか?」

「うん、もちろん良いよ」


 俺がそんなお願いをしていくと凪はいつも通りニコっと柔和な王子スマイルを浮かべてきてくれた。やっぱり凪は優しいヤツだよな。


「ありがとう。そのミステリー小説も楽しみにしてるな。でも凪って結構な頻度で読書してるよな。もしかして本を読むのが好きなのか?」

「そうだね。中学と高校の頃は文芸部に入ってたし、その頃から本を読むのは好きだよ」

「え、そうだったのか? 何だかそれは意外だな。凪は身長も高いし体力もある方だから運動系の部活に入ってたのかとずっと思ってたわ」

「いや、一応バスケ部にも所属してたよ? 友達に助っ人としてバスケ部に入部してくれてって頼まれてね。でも練習に行くのがめんどくさくなった時は頻繁に文芸部に隠れて一人でひっそりと本を読みながらまったりと過ごしてたね」

「はは、なるほど。文芸部が丁度良い隠れ家になってたんだな。でも学校の中にそういう隠れ家みたいなのがあるのって何だか楽しそうだな」

「ふふ、そうだね。あの頃は毎日すっごく楽しかったなぁ……って、あ、そうだ。そういえば大樹は今日の講義は全部終わったんだよね? この後はどうする予定なの?」

「俺は普通にこのまま真っすぐ家に帰ろうかなって思った所だよ。まぁ今日は特に用事とかも無いしさ」

「そうなんだ。それじゃあ良かったら今日はこのまま一緒に帰ろうよ。それでついでに駅前のカフェでノンビリとお茶でもしていかない?」

「え? そんなの別に良いけど……でも凪は本を読んでたんじゃないのか?」

「ううん、別に僕も暇つぶしで読んでただけだしね。それに……」

「それに?」

「それにせっかく大樹がフリーになって沢山遊べるようになったんだからさ、だから今日は大樹と一緒に帰りたいなって思っただけだよ」

「はは、何だよそれ。めっちゃイケメン過ぎるだろー」


 彼女と別れたばかりの俺に気を使いつつもスマートにお茶を誘ってくれるとか凄くイケメン過ぎるよな。俺が女子だったら絶対に凪みたいな男と付き合いたいわ。


「あぁ、わかったよ。それじゃあ今日は駅前のカフェでお茶してから帰ろうぜ?」

「ふふ、そう言ってくれて良かったよ。それじゃあ早速駅の方に行こうよ」

「おうよ」


 という事でそれから俺達はすぐにベンチから立ち上がって、そのまま凪と一緒に楽しく話しながら駅に向かって歩いて行った。

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