第35話 どう処分しようか


 ダリューンたちは俺に詰め寄って来る。


「ふざけるな! 俺たちは本当のことを言っただろうが! ゴミ野郎!」

「助けるって言っただろ! クソがっ!」

「約束を破るだなんて最低最悪なんだな! クズなんだな! 恥を知るんだな!」


 三人はものすごい勢いで罵詈雑言を投げかけて来る。俺を殺そうとしたことなど覚えていないのだろう。


 ……いやさ。俺だってこいつらに少しは同情してるぞ?


 他人の都合で悪魔として蘇生された上に、殺されたと思ったら今度はゾンビとして復活だ。なんて波乱万丈な人生なんだろうか。


 そんな奴らなんで解放してやろうかと考えもした。したけど……。


「お前なんて殺されて当然のクズだ! やはり俺達がやったことは間違ってなかった!」

「死ねよ! お前があの時に死んでおけば!」

「そうなんだな! この化け物!」


 ……こいつらが口を開くたびに、助けようという気持ちが失せて来るんだよ。

 

 というかこいつらを野にはなったら、絶対どこかで問題起こすのが目に見えている。


 俺はラクシアを連れて三人から離れると、小さな声で話をすることにした。


「ラクシア。こいつらのゾンビ化を解除して土にかえせないのか?」

「無理かなぁ。この三人は相当に高位のアンデッドだから、もはやボクの魔法を消しても自分たちの力で存在できちゃう」

「高位ってどれくらい?」

大将アドミラル級でも上位。もしかしたら元帥級に届くかも」

「元帥級ってもはや神話に近い魔物だぞ……」


 なんであいつら、ムダにアンデッドの才能高いんだよ……。


 しかもそれだけヤバイならなおさら解放はダメだな、うん。やはりあと腐れなく処分するしかないな。


 俺はリーンちゃんとイリアさんも集めて、三人の処分方法について相談する。


「流石にダリューンたちを殺すのは微妙だと思うんだ。だから……」


 俺の考えていることを言うと、イリアさんたちは一斉に頷いた。


「いいと思いますわ」

「ボク的にはもったいないけど仕方ないか……」

「可哀そうだとは思いますけど、やむを得ないですね……」


 と三人とも納得してくれたので、俺は改めてダリューンたちに近づくと。


「おい。お前たちをどうするか決まったぞ」

「殺すって言うなら抵抗するぞ! この街くらいぶっ壊してやる!」

「この都市の人間全員が人質だ!」

「ボキュが助かるためなら、いくらでも殺すんだな!」


 うーん、すがすがしいクズ共である。


 こんな奴らと同じパーティーにいたのは本当に一生の不覚だな。今後は本当に気を付けよう。 


 俺はダリューンたちを安心させるように笑いかけると。


「安心しろ。俺は約束を守る男だ。お前たちを助けてやる。流石に俺の手で殺したり、カエルに丸のみさせたりはしない」


 約束は守らなければいけない。破ったら俺もこいつらと同じになる。


「本当だな! 絶対に助けろよ!」

「当たり前だ! 俺たちはギルドマスターに騙された被害者なんだから!」

「早くボキュたちを自由にするんだな! ついでに金貨も寄こせなんだな! お前の顔なんてもう見たくないんだな!」


 叫ぶ三人を前に俺は笑い続ける。


 なにこれくらいは許してやろうじゃないか。こいつらだって可哀そうな奴らなんだから。


 さて俺はこいつらを助けるとは言った。だがどう助けるかまでは約束していない。


「助けるとは言った。だがそもそも助けるには色々な意味があるよな? 助ける、他の言葉なら救うなどもだが人によって救いは違うよな?」

「なにをグダグダと言ってるんだよ! 早く金を寄こせ!」

「金こそが救いなんだな!」


 わめき散らす三人。うん、やはりこいつらはダメだな。


「だが救いに関しては幸いなことにプロフェッショナルがいる」

「「「プロフェッショナル?」」」


 どうやらダリューンたちは分からないようだ。


 俺は振り向いてとある人物に視線を向ける。


 彼女は救いにおける第一人者だ。常に聖女として怪我人を救い、貧民に食事を配ったり、教会で奉仕活動にいそしんでいた。


 そしてとうとう、聖女とまで言われたまさに救いの神……!


「ということでお願いします、イリアさん! こいつらを聖魔法で救ってやってください!」


 ようはイリアさんの聖魔法で浄化して頂こうというわけだ!


 これは救いだ! どう考えても救いだろう! だって聖女の聖魔法だぞ!


「ふ、ふざけんなああああああああ!」

「そんな悪女に殺されてたまるかよ!」


 ダリューンたちは必死に逃げようとするがもう遅い!


 すでにイリアさんの殺戮魔法の射程範囲だっ!


「浄化の光よ! 死者に安息の眠りを! ホーリーブレイカー!」


 イリアさんが叫ぶと同時に、彼女の日傘から裁きの光が放たれた。


 光はダリューン達に直撃すると、奴らの身体がどんどん膨らんでいく。今にも破裂しそうな状態だ。


「い、いやだっ!? 助け、助けてくれぇえええ!?」

「せ、せっかく力を手に入れたんだぞ!? これからいくらでも自由に……っ!」

「嫌なんだなあああああぁぁぁっぁ!?!?!?」

「安らかに眠るのですわ!」


 三人が悲鳴を挙げてからすぐに、奴らの身体は破裂して消滅した。


 いやさ。流石に俺も助けると言った手前、剣とかで殺すのはどうかと思ったんだ。


 でも聖女様の浄化で天に召されるならば、あいつらだってきっと本望だったはずだ。だって聖女様だぞ? 俺は絶対にゴメン被るけど。


 まあこれは仕方なかったんだ。うん。


「よーし。これであと腐れなく処分が完了ですね」

「確かに腐ってはないですけどね……まあいいでしょう。それよりもベイロン領の後処理をしないと……」


 全部始終を見ていた受付嬢さんが少し引きつって笑っている。


 そういえば俺たちは緊急事態だったから慌てて去ったけど、ベイロン領って事後処理どうなってるんだろうか? 


「そういえばベイロン領ってどうなってるんですか? 魔物はだいたい倒したはずですが」

「さっき連絡が来たのですけど、領民が怒って一揆が起きてるそうですよ。領地を守れない領主は不要だー、と」

「うわあ……」

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