第30話 隠してた本気×4
俺たちは顔を見合わせて互いに驚いていた。
「隠してた力ってどういうことだよ!? 聞いてないぞ!?」
「それはワタクシのセリフですわよ!」
「ボクも聞いてない!」
「というか全員が言ってないなら当然かと……」
リーンちゃんが至極まっとうなツッコミを入れて来る。
確かにその通りだ。だがまさか俺以外の三人が力を隠しているとは……。
俺以外はちゃんと全力出してると思ってた。
「……ちなみに隠してた力ってどんなのだ?」
「聞くならまず自分から言うべきだと思いますわ!」
「ボクもそう思う! ヴァルムから言うべきだよ!」
「わかったよ。じゃあ俺から見せてやる」
俺はそう叫ぶと同時に
すると俺の身体の筋肉が膨れ上がっていく。
「ええっ!? どうしてそんなことになるのですの!? 自分の身体を膨れ上がらせるなんて不思議ですわ!」
「貴女はいつも他人を膨れさせて破裂させてるじゃないですか……仕組みは簡単ですよ。俺の身体に流れてる血液の一部を、強化ポーションに変えたんです」
俺の力は自分の出した体液を、飲んだことのある液体に変える力だ。
出したというのは口とかじゃなくても、自分の身体が作った時点でそう判定される。
以前にダリューンたちにめった刺しにされた時も、この力で血液の一部を回復ポーションにして治したのだ!
「吐息で相手を気絶させる程度しか、使い道がないと思ってましたわ」
「ただ臭い息を吐くだけじゃなかったんだね!」
「お前らちょっと酷くない? 逆に聞くけどさ。あのお荷物三人引き連れて、臭い息吐くだけで守り切れると思うのか?」
「すごい説得力ですね……」
まったくイリアさんもラクシアも俺のことをなんだと思ってるんだ!
俺は思わず地団太を踏むと、周囲がグラグラと揺れ動いてしまった。さっきのダリューンよりだいぶ揺れてると思う。
「ちょ、ちょっと! あんまり揺らさないでよ!」
ラクシアはちょっと驚いていて珍しく可愛い。普段からそれくらいならいいのに。
ところでさっきのダリューンの時は大して驚いてなかったので、やっぱり俺の方が震度が大きかったようだ。
「悪い悪い。それで三人はどんな力を隠してたんだよ?」
「ならワタクシが言いますわ。ワタクシは力を隠していたというよりも、全力を出したことがないのです。ほら全力を出す前に破裂して死んでしまわれますので……」
「「「うわぁ……」」」
そういえば聖女として活動していた時も、回復魔法の力を少し入れ過ぎて少し皮膚が膨れて……とか言ってたな。今まで全力を出したことがないのか。
全力を出してないのにパンパン魔物を破裂させてたのかよ……。
「えーと。じゃあ次はボクだね。ボクは近くに眠っている英霊たちを、強化ゾンビにして蘇らせることが出来るんだ。普通の凡人とは違って相当強いよ! カースリジェネレーション!」
ラクシアが叫ぶと同時に、少し離れた場所に巨大な魔法陣が出現する。
そして地面から生えてくるように、鎧を着こんだ腐った死体が現れた。
……あれは強いな。少なくとも今のダリューンたちよりも強い。
そう感じられるほどには強者のふるまいを見せていた。
「ところでそんな英霊をゾンビにしていいのか……?」
「大丈夫! 英霊まで行きついた人だから、人々を守るためなら許してくれるよ!」
そんな英霊ゾンビさんはカッと目を見開くと、
「我の眠りを妨げたのは誰だああああああああ!!!!!」
微塵も許してないじゃん。そりゃ起こされたら激怒するわな。
そんな英霊ゾンビさんはダリューン達の方を睨むと。
「貴様らかあああああっぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「「「!?」」」
ダリューンたちが冤罪を押し付けられたようだ。まあいいか。
そして俺達の視線は最後に残ったリーンちゃんに向けられる。
「え、えっと……私も言った方がいいですか?」
「そうだね。みんな言ったんだからさ」
「ここまで来たら教えて頂きたいですわね」
「ボクより強い力ではないだろうけどね!」
ん? なんかデジャヴ感があるな?
そんな中でリーンちゃんは少し恥ずかしそうに口を開いた。
「えっと。私はダンジョン内で置き去りにされた後、カエルの魔物の群れに襲われたんです。その時に蛙を使役する力に目覚めまして……。出て来て、
リーンちゃんが叫ぶと同時に、空から人の三倍はあろうかというカエルが落ちてきた。
なんと跳躍力のあるカエルに翼まで生えていて、なんというかその足いる? という感じだ。
「ゲコオオオォォォォ!!!」
巨大カエルが吠えると周囲の空間が歪んでしまう。
こいつもかなり強そう。少なくともダリューンたちより強いだろう。
「この子はまだ成長途中ですが、現時点でも
リーンちゃんの話を聞いて、俺たちは微妙な顔をしていた。
何故かというとちょっと申し訳ないのだが……。
「普通なリーンちゃんが力を隠していたことに驚いてて……」
「一番力を隠さなさそうな人が、一番力を隠してたのでつい……」
「一番インパクトがありすぎて驚いちゃった。リーンちゃんが一番目立つなんて……」
「私が目立ったらダメなんですか!?」
ダメってわけじゃないんだ。ただこう、違和感がありすぎるってだけで。
「さてじゃあ四人とも力を見せたところで相談だ。誰があの三人を相手にするかのな」
さっきから黙り込んで震えているダリューンたちに視線を向ける。
「ダリューンたちは俺が倒すべきだと思うんだ。腐れ縁だし」
「私は聖女として悪魔を滅ぼす義務がありますわ」
「ここの土地はボクの故郷だから守りたい」
「ゲコォ!」
「
どうやら俺達は全員があの三人を倒したいようだ。
ただ四等分したいのだがダリューンたちは三人しかいないんだよな。そうなると……。
「よしじゃあ早い者勝ちだ! 敵は三人だから誰かひとりは倒せなくなるぞ!」
「「「乗った(ゲコッ)!」」」
「「「いやだああああああああああ!?!?!?」」」
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