イカれたメンバーを紹介するぜ!
太陽と見紛うようなスキンヘッドに彫りの深い顔。
いくつかの傷跡がより一層強烈さに拍車をかけ、爬虫類じみた目は狂気的でさえあった。
「出た! ガー・アリゲーター!! こんなとこまで何の用だ!!」
いや、本当に何の用だ?
それもこんな時間に・・・・・・。
「あのなァ・・・・・・」
ガー・アリゲーターは不機嫌そうに頭を掻く。
その様子を見たラヴィが、こっそりわたしに耳打ちした。
「コーラル」
「な、何・・・・・・?」
「たぶんだけど・・・・・・カイマンだよ。ガー・カイマン」
「そ、そだっけ・・・・・・? 名前間違えたから不機嫌そうなの?」
恐る恐るガーの顔を見上げると、眉間に皺を寄せてただでさえ彫りの深い顔により濃い影を刻んでいた。
「おめェらな、内緒話ってのは本人の居ないとこで、本人に聞こえねェようにするモンだぜ? あ?」
スキンヘッドに浮き出た血管が脈動する様を幻視する。
めちゃくちゃお怒りである。
「ご、ごめんって、カイマン。ほら、茹で野菜あげるから」
「うま・・・・・・じゃねェよ! 俺ァ、アリゲーターでもカイマンでもねェ! ガー・クロコダイルだ!」
苦し紛れに野菜の刺さったフォークを口に突っ込んでみたが、効果は薄いみたいだ。
というか敵を増やしてしまった気がする。
隣のラヴィから注がれる視線がなんだか冷たい。
「ま、まぁまぁ落ち着いて・・・・・・ね? 朝早くから頭に血を上らせてると・・・・・・なんかたぶんよくないよ?」
「ンな朝早くもねェだろうがよ・・・・・・」
ガーが呆れた風にため息をつく。
ひとまず怒りの熱は過ぎ去ってくれたみたいだった。
「でも・・・・・・ほんとになんでこんな時間にここに? ていうかガー、ラヴィの家知ってたんだ・・・・・・」
「いや、私教えてないと思うけど・・・・・・」
「えぇ・・・・・・やっぱり後々ムカついて尾行してたとか・・・・・・?」
こんないかつい顔と体してて、やり口が随分陰湿だ。
きっとこれから毎朝この家の庭で歌ったり、バーベキューしてゴミをそのままにしていったりするのだろう。
「ンなわけあるか! 俺たちゃァなァ、おめェらに仕事頼みンきたンだよ! 家の場所はギルドに・・・・・・あの羊のやつに聞いたら教えてくれたわ」
「「個人情報・・・・・・」」
ギルドは確かに冒険者登録の際住所とかも聞かれる。
だけどそれを不用意に漏らすのは言語道断なわけで・・・・・・後でシープ・ネムネムにはわたしたち流のお礼をしなきゃならなそうだ。
「ま、コレでも俺ァ結構信頼されてっからな。ちィと頼んだら融通してくれたわ」
「脅迫とかしてないよね???」
「あんた人のコトなんだと思ってンだよ」
人は見かけによらないとは言うけど、結局人間性っていうのは自己表現に現れる。
そしてこのガー・クロコダイル、服装からして見事に荒くれて・・・・・・・・・・・・ないかもしれない。
身なりだけ切り取って見ればわりと冒険者としては普通のかっこかもしれない。
顔と体つきのせいで何着ても荒くれて見えるだけだコレ。
「いや、騙されないよ」
「何に・・・・・・?」
どうやらわたしの思考が勝手に彼方の方に突っ走ってしまったみたいで、ラヴィにも首を傾げられてしまった。
とりあえずお互いにヒートアップしてしまったということで、両成敗にして話を進める。
「それで、わたしたちにお仕事ーって、どういうこと?」
「昨日言っただろ、また仕事頼むかもって」
「言ってたっけ?」
ラヴィと顔を見合わせる。
わたしたち両方とも疲労で記憶が吹っ飛んでしまったのか、ラヴィも全然ピンと来てない顔をしてた。
「そこで躓かないでくれよ。いいから、言った! 言ったンだ! 言ったってコトで話進めるからな!」
「言ったっけ???」
「しつこい!!!!」
流石にからかいすぎたといいかげんに謝りながら話の続きを促す。
ガーは無い髪をかき上げるような仕草の後、言葉を続けた。
「あの後な、俺ンとこにギルドから指名依頼が届いたんだワ」
「指名、依頼・・・・・・?」
依頼って言ったらギルドの掲示板から見繕って引き受けてくるものだと思ってたけど、そういうのもあるのか・・・・・・。
ラヴィはその言葉にちょっと意外そうな表情を浮かべ、頷いた。
「へぇ・・・・・・ていうことは本当に信頼されてるんだ」
「さっきからそう言ってるだろうがよォ・・・・・・」
まだ何も始まってないのにガーはちょっと疲れてきてしまっている様子だった。
さっきまでは怒りに繋がっていたのが、今では「もう勘弁してくれ」に繋がっている。
相当ヘンな人であるガーにまでそんな感じ出されちゃうと流石のわたしも危機感を覚えた。
「まぁそれでよォ・・・・・・別に今回のは指名依頼ってことで人数も問題無いンだが、なにぶん結構骨が折れそうな依頼内容でよォ。俺たちも楽してェから、どうせなら信頼できるやつに協力頼みたくてな」
「なるほどね」
話を聞いていたラヴィは真面目なところにはちゃんと真面目に頷く。
わたしはギルドからも信頼を置かれてるパーティから信頼を得られてるラヴィが素直にすごいと思った。
ラヴィは答える。
「昨日は私だけだったけど、今日来た仕事の依頼なら当然コーラルも一緒に来ることになる。それでもいい?」
「・・・・・・ンなこと、次仕事頼むときゃア二人分の料金が要るなっつったろ? はなからこっちもそのつもりだよ」
ガーはそう言って何でもないことのように頷くが、わたしには少し緊張感が走る。
だって、この人・・・・・・なんだかんだですごい人ではあるみたいだし・・・・・・。
「あの、えと・・・・・・わたし、あんまり強く、ない・・・・・・から、ラヴィよりは・・・・・・その安い報酬がいいカモ・・・・・・」
プレッシャーに負けて値下げ交渉に出る。
報酬の。
言い換えればお金は安くていいから期待に応えることは放棄させてくださいという情け無い提案だ。
とは言え一度出してしまった言葉は引っ込められない。
わたしは今この瞬間のわたしの情け無さを受け入れるしかない。
「ん? いやまぁ、そりゃ俺たちからしても出費は軽いに越したこたねェが・・・・・・」
「・・・・・・」
「んまぁ、そこら辺は・・・・・・考えとくわ」
なんというか、プロ意識に欠けた発言だったけど、ガーはいまいち分からないみたいな顔をしつつも受け止めてくれた。
「ってなわけで、こっちの仲間も紹介するぜ。そっちの・・・・・・コーラルって嬢ちゃんはまだよく知らねェだろ?」
そう言ってガーは玄関の前から、少し横にはける。
その後ろからやってくる、二人の男。
あの時もガーと一緒に居た、ガーの仲間だ。
二人の男はわたしたち・・・・・・どちらかと言えばわたしの前まで来て軽く会釈する。
どっちもガーに負けないくらいクセのある男だった。
片方は赤い髪をモヒカンにして、牙に模様が描いてある布をマスクみたいにして口元に巻きつけた、典型的なチンピラみたいな格好をした男。
もう片方は、あんまり見慣れない黒ずくめの服を着た目つきの鋭い男だった。
その鋭い眼光を強調するように、頭もフードみたいなものにすっぽり覆われ目の位置だけが見えるようになっている。
全然違う格好をしているのに、何故だか昨日の辻アナライザーさんと似たような雰囲気を感じた。
モヒカンの男が名乗る。
「ワシゃア、ラニア。ラニア・タスクっちゅうもんや。なんやこないだは迷惑かけちったがな、まぁよろしゅう頼むわ」
「よ、よろしくお願いします・・・・・・」
これまた悪い人じゃないんだろうけど・・・・・・正直なところ苦手な雰囲気の人だった。
そしてもう一人の方は・・・・・・。
「どうも。拙者はプレコ。プレコ・アルマにござる。おなごと話したことはあまりござらぬ故、何を話したら良いか分からぬが・・・・・・何卒今後とも宜しくお願いするでござる」
やっぱりヘンな人だった。
この人たち大丈夫なの?の念を込めてラヴィに視線を送る。
するとラヴィは肩をすくめて「実力だけは確かだよ」と、どこか困ったような表情で言った。
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