いざ出陣

「じゃ、私家に荷物取りに行くけど・・・・・・コーラルも来る?」

「え、うん・・・・・・。家持ってるんだ・・・・・・」

「そりゃね。生まれたときからずっと住んでる家だけど」

「ああ、そっか・・・・・・」


 ギルドで簡単な依頼を受けて、わたしは準備を整えるためにラヴィの家に向かうことになった。


「荷物って、何取りに行くの?」


 歩くラヴィに着いていきながら尋ねる。

確かラヴィはガー・アリゲーターたちの依頼から帰ったときにわたしを拾ったから、外に出るのに必要な道具は揃っていそうなものだけど。

それともたくさんの道具を消耗してしまったのだろうか。


「何って・・・・・・武器だよ、武器」

「え、今武器持ってないの?」

「あー・・・・・・うん、私・・・・・・普段は武器借りてるから、依頼者から」

「えぇ・・・・・・」


 まぁ・・・・・・身軽だなとは思ってたけど、まさか自分の武器は家に置きっぱだったとは。

因みにわたしは、ちょっとナイフの範疇を飛び出すくらいの刃渡りの短剣をバッグに仕舞ってある。

ちゃんと戦うようの剣も持っていたけど、置いてきてしまった。


「そういえば・・・・・・コーラルも随分持ち物が少ないようだけど・・・・・・?」

「うっ・・・・・・」


 ちゃんとした武器も、鎧も着替えも何もない。

確かに追放された身としては所持品が少なすぎるだろう。

そこら辺に関しては正直完全にわたしのせいなので、なんとも言えない。


「まぁ、いっか。生活用品に関しては私の家にあるし・・・・・・服も私のサイズで入らないことはなさそうだしね」

「え、借りちゃっていいの?」

「っていうか、たぶんコーラル住む場所無いでしょ?」

「うっ・・・・・・」

「いーよ、使ってない部屋ならあるから。でもそんな立派な家じゃないからね」


 なんか、衣食住ぜんぶ貰ってしまった。

あ、いや・・・・・・一時的にはってことなんだろうけど、それでも破格だ。

あんまりしてもらってばかりじゃわたしも居心地良くないだろうし、頑張らないと。


 人通りの多い道から外れて、植垣のそばを流れる小さな水路に沿って歩く。

ギルドや酒場なんかがある場所と比べると賑やかさには欠けるけど、それでも活気のあるところだ。

畑や、干された洗濯物など、生活の面での営みが感じられる。


 ダンが買った家はギルドとかにアクセスのいい通りに建った家だったので、わたしからすれば結構新鮮な空気感だ。


「このあたりにラヴィのお家があるの?」

「うん。悪くない場所でしょ?」

「そうだね」


 お店の建物が立ち並ぶ通りと違って建造物の密度も低いから風の通りがいい。

どこかの家から昇る煙からは、料理の焼けるいい匂いがした。

たぶん魚料理だ。


 あんまり見慣れてない景色にキョロキョロしながら歩いていると、やがて他の家より一回り小さな家が見えてくる。

こぢんまりとした庭には年季の入った井戸と、花の植った小さな畑があった。


 そしてその庭にラヴィは淀みない動作で入っていく。


「えっと・・・・・・ここが?」

「そうだね」


 ラヴィはまるで大切なお客を招待するように、家のドアを開けてわたしにその内側を見せる。

確かにダンたちと暮らしてた家と比べるとそりゃ小さいけど、それでも綺麗なお家だった。


「入っても?」

「もちろんいいよ。ま、今は荷物取りに来ただけだけどね。部屋の案内とかは帰って来てから」

「わ、わかった」


 微妙にお預けをくらいながらも、ラヴィについていく。

ラヴィは・・・・・・おそらく自分の部屋に入って、机の上に寝かせてあった直剣を手に取る。

そうしてそのまま入り口まで折り返し・・・・・・。

庭に出てきた。


「ちぇー、ほんとに全然見せてくれないじゃん」

「そう言ったじゃない。ほら、必要なものは揃ったから行くよ」

「・・・・・・えー、もうちょっと見たいー」

「行くよ」


 そんなわけで・・・・・・。

いざ、わたしたち二人の・・・・・・初めての冒険である。

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