怪異祓記
@8101iwau
第1話 幼少のころ感じた幻覚
僕は小さいころから、人には感じないものを見たり聞いたりしていた。
あれは、幼稚園のことだった。
僕は、あまり幼稚園に行ってなくて友達も少なかった。
幼稚園の若い先生に恋心を抱いてしまうようなませた園児でもあった。
あるとき、幼稚園の先生が、事務室に入ると、私は、誰もいないことを確認し、テレビで覚えた投げキスをしてみた。
しかし、目撃者はいて、雪君という同じ幼稚園の園児から、冷やかされた。
「お前、そんなに先生のことが好きなのかよ」
子供ながら傷ついた。
すると、僕の脇腹のあたりにいやな熱がもやもやと湧き上がってくるのを感じた。
僕は癇癪を起し、冗談のつもりで言ったのだろうが雪君も驚いていた。
このもやもやとした感覚は比喩ではなく、実際に触覚でそう感じていた。
すると、その熱が、一気に熱を失い、今度は嫌な人から触られたかのようなぞくぞくする感覚が沸き上がってきた。
僕はこらえられなくなり、先ほどの先生の座っている机の下に潜り込んだ。
先生は、困惑し僕を落ち着かせようと、そっとなでてくれた。
僕は、なかなか落ち着かなかったが、先生がなだめてくれ、僕の癇癪は徐々におさまっていた。
僕は何も言わずに事務室を出ると、先ほどの感覚を思い返した。
命の危険があるわけではない。だが、怖かった。
そして、その感覚は、卒園式の時にも襲ってきた。
卒園式当日、僕は、なかなか起きれなかった。
頭にベールがかかっているように感じて、うつろだった。
母が、幼稚園に連れて行ってくれて卒園式が始まった。
僕はあの時の恐怖を思い出した。不思議とその感覚は、今日僕のところにやってくると感じた。
息が詰まった。
先生のほうを見ると笑顔で手を振ってくれた。
僕の卒園証書が手渡される順番になり、園長先生のところに歩いて行った。
そのとき、背中に不快感が走った。ぞわぞわと僕の背中を撫でまわしている。
僕は緊張していて、卒園証書を受け取らなければならないのに動くことができなかった。
後で、聞いた話によると、僕は十数秒何もせず突っ立っていたように見えたらしい。
僕は、その十数秒の間押し返そうと戦った。
幼稚園生だったから、証書を受け取って、席に戻るという選択肢は浮かばなかった。
僕はぎこちないしぐさで、園長先生から何とか証書を受け取り席に戻ることができた。
しかし、その恐怖はこれからの人生で、常に僕のとなりにいた。
僕の背後には、常に地獄が広がっていた。
怪異祓記 @8101iwau
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。怪異祓記の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
中嶋ラモーンズ・幻覚11/安保 拓
★0 エッセイ・ノンフィクション 連載中 1話
中嶋ラモーンズ・幻覚10/安保 拓
★0 エッセイ・ノンフィクション 連載中 1話
中嶋ラモーンズ・幻覚7/安保 拓
★0 エッセイ・ノンフィクション 連載中 1話
中嶋ラモーンズ・幻覚4/安保 拓
★3 エッセイ・ノンフィクション 連載中 1話
中嶋ラモーンズ・幻覚3/安保 拓
★0 エッセイ・ノンフィクション 連載中 1話
中嶋ラモーンズ・幻覚2/安保 拓
★0 エッセイ・ノンフィクション 連載中 1話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます