【会長のあとがき】

 なんか、づるし付けられてしまった。うぅ……しいまいにやらせればいいのに。

 なに書けばいいのか全然分からないから……もう、杉崎のこと書くわ。だってアイツ、きようなんだもん。自分てんだから、自分のこと、全然作中で書いてないっ!

 しかも、杉崎のことだから、この本じゃどうせ自分のことは、ありのままに……どうのようにしかえがかないと思っていたら、あんじようだったよ。げん稿こうを読んだら、自分のことを本気でただのナンパ男みたいに書いている。まったくもう……。

 仕方ないから、当初の予定通り、私達がここでフォローしておくことにしようと思う。私達がどうしても書きたかったことって、つまり、そういうことだ。

 あ、かんちがいしないでよね! 生徒会の人気のためだよ! 別にじん的に杉崎のことを気に入っているからとか、そういうんじゃないからね! ホントに!


 さて。

 えと、たぶん、話からもちょっと分かると思うんだけど。

 杉崎けんは、そのぉ……いい、ヤツだ。

 ああ、やっぱりずかしいなぁ。こういうの書くの。でも、書いておかないと。一話の時みたいに、知弦に小説っぽく書いてもらっても良かったんだけど……。う、ううん。やっぱり、会長たる私が代表して伝えるべきことだよね。うん。

 ありのまま書けって言われているから、心の中で思ったこと全部そのまま書いちゃっているけど、その、ゆるしてほしい。ごめんね、読みづらくて。

 え、と。

 その、杉崎鍵っていう人間は、見かけも、そして心の中も、この本で描かれているままの人間だ。

 鹿で、エッチで、ハーレム最高って本気で思っているし、女の子に弱いし……。

 ……なんか書いていたら、つうにイライラしてきた。なんでアイツのフォローなんか……。……まあ、仕方ないけど。

 その、杉崎はたしかに「そういうヤツ」なんだけど、さ。

 なんていうかやっぱり……「それだけ」じゃ、ないんだよね、うん。

 知弦の書いた部分でもげんきゆうされていたけど、彼は、私達を本当にささえてくれているんだよ。

 例えば、私じんのことで言うとね。

 ここだけの話……えっと……私は、やっぱり、本当は、自分が会長のうつわだなんて、自信は全然なかったんだ。

 でもね。こうしてちゃんと会長続けて、会長として自信満々にふるっていられるのは……くやしいけど、ぜつたいに杉崎のおかげなんだよね。

 彼がいてくれるから、私は会長でいられる。

 彼という副会長が支えてくれるから、さくらくりむは生徒会長なんだ。

 それに……やっぱり、女の子としても、うれしいんだよ、本当は。

 人気投票という結果こそ出ているけどさ。ああやって……じようけんに、よう姿だけで、私達をぜんこうていしてくれる杉崎って……ありがたいんだ。本当に。

 これは私だけじゃなくてさ。たぶん、生徒会の女子みんなのなやみだと思うんだけど。

 こういうシステムだとね。確かに多くの人はおうえんしてくれるんだけど……やっぱり、どうしても、私達を気に入らない人っているんだよね。


「容姿で選ばれたくせに、えらそうに」


 そんな心無い言葉……やっぱり、耳に入ってくる。それは当然のことだから、はんろんなんてする気もないし、そう言われない様にがんろうって思うのが、私達だけど。

 でもやっぱり……つらいのは、辛いんだ。

 ちょっとだけ……泣きそうにも、なるんだよ。負けそうに、なるんだよ。

 でもね、そんな時、生徒会室に行くと、杉崎はいつもそこにいて、こんなこと言ってくれるんだ。


「会長は今日もわいいなぁ。ああ、もう、ホントえるっ! ちくしょう、ひとめしてぇ! もう大好き! いや、マジでマジで! 愛してるって、会長!」


 それはさ。ホント、笑っちゃうような、馬鹿な言葉なんだけどね。

 でも。

「笑っちゃう」んだよ。どんなしんきようでも。どんな辛いことがあった日でも。

 アイツはホントさ。

 エロいこととか、モテるためのこととか、人をがおにすることとか、そういうことしか頭にない、馬鹿だけど。

 だからこそ。


 頭ん中全部、幸福しかないんだよね。


 それは他人の幸福であり、自分の幸福でもあるけど。

 最近気付いたことなんだけど、どうも、アイツの中には自分なりの「ルール」があるみたい。

 本気でいやがっている人には、絶対にアホなちょっかいかけたりしないし。

 ハーレムうんぬん言っているわりには、決して女子を下になんか見ていないし(むしろあがめているぐらいだ)。

 フェミニストかと思ったら、意外と、男子に対してもめんどういいし。

 ……っていうか私、なんでここまでフォローしてるんだろう……。ああ、もう、なんか変なこと書いたなぁ! でも、一回書いたら消すなって、知弦が言うし……。うぅ……。

 こほん。

 話もどすけど。杉崎は……色んな意味で、笑顔をりまいてくれる人間だ。

 たまに感じるわ。ああ、コイツが会長になったら、おもしろいかも、って。

 私も自分のほうしんに、ちゃんと今は自信持っているけどさ。

 だけど、コイツの作る学校っていうのも、なんとなく、楽しそうだなって思う。

 ハーレム目指すって言うだけあって、杉崎って、たくさんの人間を幸福にすることが大好きみたいだから。

 ホント……もしかしたらいつか、杉崎はすごい大物になるんじゃないかな。

 生徒会だけじゃない。

 ちょっと前、アイツのクラスをのぞいてみたことがある。幸福にあふれていた。

 杉崎となつが二人でいつしよになって、クラスに笑顔を振りまいていた。

 その……悔しいけどさ。たしかにその時、ちょっとだけ、しつ……しちゃったかもしれない。なんていうか……杉崎は、私達だけの杉崎で終わるようなヤツじゃないんだなぁって、ちょっと思ったから、さ。

 あ、か、かんちがいしないでよねっ! 杉崎を、その、す、す、す、好きとか、そ、そういう話じゃないからね!

 ふぅ……って、ここまでなおに全部書く必要あるのかな……本当に……。

 知弦は「その方が、アカちゃんの場合は絶対面白いわ」って言っているんだけど……。なんか、目が笑っているのが気になるんだよね。

 ……まあいいや。

 とにかく、私達は、杉崎をただのアホみたいには思ってほしくないわけで。……いや、実際、けつこう、ただのアホなんだけど。

 なんでかな……私達は散々杉崎のもん言うんだけど、他人が杉崎の悪口言っていると、びっくりするほどイライラーってきちゃうんだよね。

 ……そう、それだ。こんない言書いちゃうのは、この前のアレが原因だ。

 えっとね。説明すると。

 この前、たまたまふゆちゃんと街でばったり会って、二人で買い物していたんだけど。その時、他校の男子生徒にナンパされちゃって。

 真冬ちゃん、杉崎以外の男には本当に今でもおくびようだから、すっかりおびえちゃって、私が彼らとたいすることになったんだけど。

 その時、彼らの一人が、私達との共通の話題でも見つけようとしたのか、笑いながらこんなこと言いだしたのよね。


へきようって、あの杉崎が副会長やってんだろ? おれ、アイツと中学同じだったんだよ。

 ハハッ、アンタら知ってる? アイツさ、中学時代ふたまたかけて、んで、の妹が入院したとやらで不登校になったんだぜ。自業自得のくせによぉ、その上サボリだぜ? ムカついたから、三年の間は結構サンドバッグにさせてもらったなぁ。

 それが笑えるんだけどよぉ。アイツ、いくらじんなぐっても、なんも文句言わねーの! ありゃいいストレス発散だよ、ホント。俺がうわさ広めたら、最終的には他校からも殴りに来るのいたぐらいでさっ。

 それでも全然はんこうとかしねぇの! むしろ、自分から殴られてやんの! ぶつぶつ、『俺が二人にあたえたいたみは……こんなもんじゃ……』とか、なんか気取ってつぶやいていてさぁ! それがまたイラつくんだよねぇ~。

 ああ、アンタらもさ! ストレスたまったら、アイツにぶつけるのがいいよ! 同じ学校なんだろ? なんなら今度いつしよにさ──」


 私が彼から杉崎のことを聞けたのは、そこまでだった。

 だって。

 次のしゆんかんには、真冬ちゃんが……あの、杉崎以外のだんせいきよくたんこわがるどころか、女の子に対してだってビクビクしているような真冬ちゃんが。昔は、男性にれるとくさるとまで信じんでいたぐらいの、真冬ちゃんが。

 目の前の男のほおを、思い切りっていたから。

 で。

 それを見た、コンマ一秒後には。

 私も、ぎやくサイドから、思わず「ぐー」で殴ってやっていたわ。

 ええ、それはもう、かたく、硬ぁくにぎった「ぐー」だったわっ! ひねりも加えたわ!

 ま、さすがに、直後に私と真冬ちゃんは、男がキョトンとしているうちにだつごとげ出したけどね。

 ……真冬ちゃんと私だけじゃない。深夏も知弦も、ぜつたい、あのじようきようなら、同じことをしただろうと思うのよね。

 ……なんの話だっけ?

 …………。

 な、なんかこれじゃ、私達が杉崎のこと大好きみたいね……。

 こ、こほんっ!

 そ、そういうことじゃなくてっ!

 ああ、もう!

 だ、だから。

 とにかく、杉崎はいいヤツなんだっ! それだけ分かっておくように!

 私達のことはいいから、この本を読んでくれたなたが、杉崎を好きになってくれたら、私達はとてもうれしく思う。

 そして、貴方が碧陽学園の生徒なら。

 どうぞ次の選挙は、美少女じゃなくて、杉崎に会長の票を入れてやって下さい。

 絶対。

 絶対、おもしろい学校生活にしてくれるからっ!

 私達の伝えたいことは……それだけです。


 ちなみにこのあとがきは、杉崎は読むのきんということになっているの。だから、みんなも見せたらだよ!? だって、こんなの杉崎が見たら、すぐ図に乗って、

「会長! 俺のむねに飛び込んでおいで! いや、俺からきしめてやろう!」

 とかなるのは明白だもの。

 ……まあ、ちょっとだけ、抱きしめてもらいたい気も……。

 こ、こほん!


 え、と。


 い、以上! もう、なんかけつほりそうだから語らない!


 ええと、ぷれぜんてぃっどばい、生徒会長、桜野くりむでしたっ!


 終わちっ!



 付記


 最後のはなんとなくアカちゃんらしいのでそのままにゆう稿こうしてやりました。


あか知弦

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生徒会の一存 碧陽学園生徒会議事録 @SekinaAoi

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