第31話 影を追うラクダ
砂嵐の魔術師アゼムとの出会いで砂の宝石を手にしたシンちゃん、キラちゃん、そしてサンドフィッシュ。試練を乗り越えた彼らは、自信を胸に旅を続けていました。
太陽が昇り、砂漠が熱気で輝き始めた頃、遠くの砂丘の向こうに、一列になって歩くラクダの影が見えました。
「見て!あれ、ラクダの隊列じゃない?」とキラちゃんが指を差しました。
「でも、何かおかしいよ。ラクダが進んでるのに、影が違う方向に動いてるみたい…」とサンドフィッシュが不思議そうに言います。
シンちゃんも目を凝らし、「確かに変だね。もしかして、ただの影じゃないのかも?」と興味をそそられます。
三人はそのラクダの影を追いかけることにしました。しかし、ラクダの影は近づくたびに遠ざかり、まるで三人を誘うかのように砂漠の奥へと消えていきます。
「待って!私たちをどこかに導いてるみたいだよ!」とキラちゃんが息を切らしながら叫びます。
しばらく影を追い続けると、砂丘を越えた先に奇妙な広場が現れました。その中央には、一頭の大きな白いラクダが立っています。周囲にはラクダの影がいくつも交差し、不思議な模様を描いていました。
「このラクダ、普通じゃないね」とシンちゃんが呟きました。
白いラクダは三人をじっと見つめ、低い声で話しかけてきました。「よくここまで来たな、旅人たち。私は影を司るラクダ、カリム。この地に来た者に、影の真実を教える役目を持っている」
「影の真実?」とサンドフィッシュが尋ねました。
カリムは静かにうなずき、「影とは光によって生まれるもの。しかし、影は時に真実を隠し、時に真実を示すものでもある。君たちに試練を与えよう。この影の迷路を抜け出し、真実を見つけるのだ」と言いました。
すると、周囲の影が動き始め、複雑な迷路を形作ります。影の道はどれも入り組んでおり、どこを進めば良いのか分かりません。
「これ、どうやって進めばいいの?」とキラちゃんが焦ります。
シンちゃんは少し考え、「影は光が作り出すものだよね。だから、光の方向を見れば正しい道が分かるかも!」と提案しました。
三人は周囲を見渡し、光が影を作る方向を観察し始めました。そして、影が交差する地点を慎重に選びながら進んでいきます。
途中、影がさらに複雑に絡み合い、迷いそうになりましたが、サンドフィッシュが「ここ!この影だけ違う向きに伸びてる!」と気づきます。
その影に従って進むと、やがて迷路の中心にたどり着きました。そこには、小さな鏡が置かれており、鏡の中には三人の姿が映っています。しかし、その姿は現実の彼らよりも少し強く、明るく輝いているように見えました。
「これが私たちの真実…?」とキラちゃんが呟きます。
カリムが現れ、「そうだ。君たちは光と影の両方を理解し、その中で自分を見つけ出した。影は自分を映し出す鏡でもあるのだ」と言いました。
カリムは三人に小さな影の石を手渡し、「この石は、光と影のバランスを保つ力を象徴している。どちらかに偏ることなく、自分の道を進むのだ」と語りかけました。
三人はその石を大切に受け取り、「ありがとう、カリムさん!」と感謝の気持ちを伝えました。
ラクダの影は静かに広場から消え、三人は再び砂漠の旅へと歩き出しました。影の試練を乗り越えたことで、三人は自分たちの内面に秘められた強さを知り、これからの冒険への自信を新たにしました。
影を追うラクダとの出会いは、三人に光と影の大切さを教え、砂漠での旅をさらに深いものにしてくれたのです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます