第30話 砂嵐の魔術師
星降る夜の翌朝、シンちゃん、キラちゃん、そしてサンドフィッシュは、砂漠の道を再び歩き始めました。星のかけらを胸に抱き、三人の心は力強い希望で満ちあふれています。
しかし、昼頃になると突然空が暗くなり、強い風が吹き始めました。砂が巻き上げられ、周囲の景色が見えなくなってしまいます。
「また砂嵐だ!」とキラちゃんが叫びました。
「でも、前の砂嵐よりももっと大きいみたいだよ!」とサンドフィッシュも驚きの声を上げます。
三人は必死に砂嵐を避けようとしましたが、風はますます強くなり、まるで彼らをどこかに誘導しているかのようです。気がつくと、三人は奇妙な円形の空間にたどり着いていました。その場所だけ風が静まり、砂嵐の中にぽっかりと空間ができています。
「ここ、なんだろう?」とシンちゃんが不思議そうに言いました。
そのとき、空間の中央に砂が集まり始め、渦を巻きながら人の形をした影を作り出しました。それは砂嵐の中から現れた魔術師のような存在でした。全身が砂でできており、風と一体化したように見えます。
「よく来たな、旅人たち。我が名は砂嵐の魔術師、アゼム。この砂漠の風と砂を司る者だ」と魔術師が低い声で話しかけてきました。
「砂嵐を操っているのはあなたなの?」とキラちゃんが尋ねました。
アゼムは微笑みながらうなずきました。「そうだ。この砂漠を越える者には、風と砂の力を知り、その試練を乗り越える覚悟が必要だ」
「私たち、どんな試練でも挑戦します!」とシンちゃんが胸を張って答えました。
アゼムは満足そうに頷き、「よかろう。では、試練を与えよう。この砂嵐の中で、君たちが進むべき正しい道を見つけるのだ。風と砂が導く声を聞き、進むべき方向を感じ取れ」と言いました。
すると、砂嵐が再び強まり、三人は視界を奪われてしまいました。
「どうしよう、何も見えないよ!」とキラちゃんが焦ります。
「落ち着いて、砂の音や風の流れを感じてみよう!」とサンドフィッシュが提案しました。
三人は静かに耳を澄ませ、風と砂の音に集中しました。その中に、かすかな低い音が聞こえてきます。それはまるで、砂嵐の中に隠された道を示すメロディーのようです。
「この音、右から聞こえるよ!」とシンちゃんが言い、三人はその方向に向かって進み始めました。
途中で音が消えることもありましたが、三人は何度も立ち止まり、風の流れと音を感じ取りながら慎重に進みました。そして、ついに砂嵐の中に大きな石碑が現れました。
「ここだ!」とシンちゃんが叫び、三人は石碑の前に立ちました。
砂嵐が徐々に収まり、再びアゼムが姿を現しました。「見事だ、旅人たちよ。風と砂の声を聞き、正しい道を見つけた君たちは、砂漠を進む力を手にした」
アゼムは三人に向かって手を差し出し、小さな砂の宝石を渡しました。「この砂の宝石は、砂漠の声を封じ込めたものだ。迷ったとき、この宝石を手にし、砂の音を感じることで道を見つけることができるだろう」
三人はその宝石を大切に受け取り、「ありがとう、アゼムさん!」と感謝の気持ちを伝えました。
アゼムは静かに微笑み、「君たちの旅がさらに輝かしいものとなるよう祈っている」と言い残し、砂嵐と共に姿を消しました。
砂嵐の魔術師との出会いと試練は、三人にとって砂漠の旅を続ける上での大きな経験となりました。風と砂の声を心に刻み、三人は再び砂漠の広がる道を歩き始めました。
新たな宝石と試練を乗り越えた経験を胸に、彼らの冒険はさらに深まり、砂漠の先に待つ未知の世界への期待が膨らむのでした。
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