第2話 プロローグ2
入学式が終わり、通常の授業も始まってあっという間に1週間がたった。
クラスではグループもでき始めて、それぞれ気の合う人同士で集まっている。
その美貌と学年首席の優秀さから中心グループにいる栗山奏の席の周りには、多くのクラスメイトが集まっている。
(今日も羽山涼くんはお休みかしら)
入学式の後、写真を撮ってあげて、少しだけ話をした羽山涼は、入学式の翌日から今日まで一度も登校をしていない。
今も涼の席は誰も座っていない。
(病気か何かかな? 入学式の時はあんなに元気そうな笑顔をしていたのに)
奏がそう思っていた時、始業直前になって、教室のドアが開いた。
それまで騒がしかった教室が静まり返る。
「あれ、あの人誰だろう」
「ほら、入学式の日いたじゃん」
「あ、あの空いてる席の人か」
などと、近くの女子生徒が話している。
奏がそちらを見ると、俯きがちな涼が自分の席に向かって歩いていた。
席に行くと、カバンを机の横にかけ、席についた。
(羽山君、やっと来た。でもなんか印象が違う気がするな)
入学式の時にしていなかったメガネをしている。
あの時あった明るい笑顔もなく、どこか影があるような顔をしていた。
「よーし、始めるぞー」
そこで、担任の女性教諭の笠井麻里先生が入ってきた。
涼への興味は薄れ、生徒たちは各自の席に戻っていった。
「みんなに言っておくけど、羽山は入学式後から昨日まで家庭の事情で休んでいたから、困ったことがあったらみんな手伝ってあげるように」
自分のことを言われていたが、涼はそれでも何か考え込んだような表情で話を聞いている様子はなかった。
放課後
クラスでも中心グループの男子、
「みんな部活とか始まったら、あまり機会がなくなるし、親睦も兼ねてパーっと遊びに行こうぜ」
「いいね、カラオケとか?」
「カラオケもいいけど、ボーリング大会もいいんじゃない」
「そうだな、行きたい人で多数決を取ろうか。まずはいくメンバーをはっきりしよう」
「私いくー。栗山さんはどうする?」
「私は用事があるから」
奏は違うクラスの賢治と放課後デートの約束があるため、断った。
最も奏は約束がなくても男子のいる集まりには参加する気はなかったのだが。
「えー。栗山さん行かないの? 俺ちょっと期待していたんだけど」
「そうだよ、せっかくなんだしみんなで行こうぜ、栗山さん」
しかし、美人で明るい奏とお近づきになりたい男子たちはなんだかんだ言って食い下がる。
そこで、奏の親友の古賀まどかが間に入る。
「はいはい、それまでよ男子たち。奏には彼氏がいるんだからそっち優先よ」
「ありがとう、まどか」
「いいのよ。奏。約束あるんでしょ。こっちはいいから早くいきな」
「分かった、じゃあね」
「うん、また明日」
奏が、教室を出ようとしていると、教室の出入り口付近で涼が男子二人に誘われていた。
「羽山も行こうぜ?」
「いや、俺はちょっと」
「絶対楽しいぜ」
「でも、ごめん」
「ああ、分かったよ。またな」
「うん、じゃあ」
涼が去った後で、男子たちは
「せっかく誘ってやったのにな」
「ああいうの萎えるよな。でも、なんだかあいつ暗いし別にいいんじゃないか?」
「まあそうだな」
と、断られたことの不満を言っていた。
(羽山君は何か事情がありそうね)
その男子たちの横を通り抜けながら、奏は思った。
「おう、奏!」
「賢治、お待たせ。行きましょうか?」
涼のことが少し気になった奏だったが、賢治にあって気持ちを切り替えたことによって、忘れていった。
その日以降、涼に積極的に話しかける生徒はいなく、また涼も自分から話すわけでもない。
昼休みなどには教室に残ることもなく、誰とも交流をしないという状態が続いた。
それから1ヶ月半ほどが過ぎていた。
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