第二十話 クラスの陽キャ二人
「うわっ、予想以上に大きいなあ。ここが県内でも有名な水族館な訳ですか」
瑞樹は水族館の建物を見ながら感嘆の声をもらす。
約束の遊びの日の午前、友利は天音、瑞樹と共に水族館に来ていた。
どこに行くかという話で瑞樹が水族館に行きたいと言ったのでこの場所に決まった訳だ。
「水族館とかいつぶりだろ。低学年の頃に家族と来て以降来てないかも」
「私も長らく行ってなかったから久しぶりに行きたかったんだよね」
水族館など久しぶりだ。
とはいえ魚にはあまり興味はない。
しかし友達がいるからか楽しみにしている自分がいる。
「瑞樹、ちょっと歩くスピード早くない〜?」
「そりゃあそうでしょ、楽しみにしてたんだから。二人とも早く行こ」
「ま、待ってよ〜」
友利はそんな会話をする二人の背中を見ながら少し場違いだなと思い始める。
もちろん二人はオシャレをしているわけで、輝きすぎて直視できない。
対してろくに人と遊んでこなかった友利はファッションなど興味がない。
なので少々質素な見た目なのである。
服は瑞樹と遊んだときと同じ服であり、ダサい訳ではないと思うが二人に並べる訳ではない。
「皆原も早く行こ」
「う、うん、そうだね」
瑞樹に急かされたため、友利も瑞樹に歩幅を合わせる。
並んで歩くと二人との差が顕著に現れてしまうが仕方ない。
瑞樹と遊んだときに服について少々不安があったので買っとおくべきだった、と友利は思う。
三人はそうして受付でチケットを買って館内に入った。
水族館の中は休日だからか予想以上に人がいた。
そして人よりも多い魚が泳ぐ巨大な水槽も入ってすぐに目に映った。
赤い魚、黒くて少し大きめの魚、そしてエイなども同じ水槽の中に入っている。
「すごっ、いろんな魚いるじゃん!」
瑞樹は水槽を指さして早速写真を撮り始める。
瑞樹はいつもよりテンションが高い。
ずっと上機嫌な顔で魚を見て目を輝かせている。
もちろん瑞樹は大抵笑顔な訳だが、いつもより笑顔が多くて楽しんでいるのが目に見えてわかる。
そんな瑞樹を見ているとこちらも楽しくなってくる。
しばらくして三人はこの水槽エリアを後にした。
そして順番に館内を回ることにした。
「この魚めっちゃ可愛くない〜?」
「うわ、本当だ。写真撮ろ」
「名前なんて言うんだろ、瑞樹ちょっと調べて〜」
友利が一人カクレクマノミの水槽を見ていると、隣からそんな声が聞こえてくる。
チラリと見てみれば小さめの魚が一生懸命ヒレを動かして泳いでいた。
「それダンゴウオって魚。可愛いよね」
「そうなの? ......あ、本当だ、調べたら出てきた。皆原、よく知ってるね」
「あはは、本で見たからね」
「魚好きなの?」
「そういう訳じゃないけど......多少は知ってる」
「じゃあこれなんて言うの?」
瑞樹は別の水槽に移動して白、黄、黒が混じった鮮やかな体を持つ魚を指差す。
また本で見た魚だったため友利は容易に答えられた。
「チョウチョウウオって魚。綺麗な魚だよね」
「何でも知ってるじゃん」
「別に何でもって訳ではないけど小さい頃本で読んだからさ」
友利は小学生の頃、誕生日プレゼントで魚図鑑を母から貰った。
興味はなかったがプレゼントだったので読んだ結果、ある程度覚えてしまった。
大半が頭から抜けてしまっているが覚えているものは覚えている。
(たしか図鑑から段々と本を読むようになったんだったっけ)
「へー、皆原って物知りなんだね。流石っ」
瑞樹はそう言って友利の肩を指で軽く押す。
純粋に褒められて少し気恥ずかしい。
「ね〜、アシカのショー見に行かない? 十一時半かららしいしみんなで行こ〜」
瑞樹に水槽にいる魚について教えていると、ニコニコとした笑みの天音がそう提案した。
「いいよ、行こ行こ」と瑞樹は天音の方に向かう。
天音は至って普通の笑顔のはず。
しかし何故だろうか、天音の笑顔が少し怖い。
少し見ていると友利は天音と目があった。
そして天音に軽く睨みつけられる。
「皆原も見に行こ、アシカショー」
「あ、うん、行く」
睨まれることに戸惑いながらも、友利は二人の元に小走りで向かった。
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