第九話 偶然の出会い
放課後はいつもやることがなくて暇だ。
趣味である読書をしたり、勉強はしているとはいえ友利は変わり映えのない生活を送っている。
変化がない分、生活に飽きが来てしまうのだ。
『瑞樹と放課後に遊びたい』と心の中では思っているが自分から誘える訳がない。
しかし自分から誘わなければ変わり映えのない生活を続けてしまうだけ。
誘われるのを待ってもいいが人気者なので先約を取らないと滅多に遊べないのだ。
大会が近いからと部活が忙しそうなので誘うのは後になるだろうがうまく誘えるだろうか。
天井を眺めながらそんなことを考えていると喉が渇いてくる。
「......あつい」
友利はそう呟いてベッドから降りる。
そして一階のリビングに降りて、水を飲みに行った。
ついでにアイスも取ろうと冷凍庫を開ける。
しかし冷凍庫の中にアイスは一つも入っていなかった。
どうやらアイスを食べるためには買いに行く必要があるらしい。
暑さを和らげるために自ら暑い外に飛び込むのはだいぶ矛盾している。
とはいえ友利はそれでもアイスを食べたい気分だった。
(面倒くさいけどコンビニ行きますか......)
友利は財布を自分の部屋から持ってきて、コンビニへと向かうことにした。
玄関のドアを開けて外に出るとモアッとした空気が友利を包み込む。
しかし夕方だからか想定していたよりは暑くはなかった。
友利の家からコンビニまでの道のりは短い。
数分ほど歩いて、友利は目的地についた。
「いらっしゃいませ」
そして友利は店内に入り、迷わずアイスコーナーに直行した。
さて、何アイスが良いだろうか。
様々なアイスがあって友利は迷ってしまう。
安定にバニラアイスで行こうか、それともかき氷風のアイスにするか。
しばらく手を止めて友利は何のアイスを買うか考える。
すると横から声が聞こえてきた。
「皆原は何のアイスにするの?」
「バニラか、ソーダかき氷か......って、早坂?」
「よ、皆原」
横を見れば友利のすぐそばに瑞樹が立っていたので驚いて一歩離れてしまう。
そして瑞樹の後ろに如月天音の姿も確認できた。
天音はヨーグルトコーナーの前で突っ立っている。
まだ二人とも学校のバッグを持っているので近くの施設で遊んでいたのだろうか。
「私はさっき天音とカラオケ行ってきてその帰りだけど、皆原は家ここら辺なの?」
「そうだね、ここから歩いて数分」
「コンビニ近いの羨ましい。夜とか、いつでも行けるじゃん」
「ちなみに早坂は何のアイスを買う予定?」
「私はこのかき氷バーだね。これ一択。迷ったらこれ買ったら?」
瑞樹はそう言ってかき氷バーを一本取り出して、友利に渡す。
友利の迷っていたアイスとは違うがいちごのかき氷がバーになっていて中に練乳が入っているらしい。
新しいアイスに挑戦してみるのも悪くなさそうだ。
「じゃあこれにしようかな」
「オッケー、じゃあ私もこれにするかあ」
瑞樹はアイスを持って天音の方に向かった。
天音は未だにヨーグルトコーナーで商品を見ているようだった。
「何見てるの? え、ヨーグルト?」
「そうそう! 結構美味いし肌に良いらしいよ〜! おやつ代わりにもなるし、最近食べてるんだよね〜」
「私そんなの気にしたことないんだけど、流石天音。モテる訳だ」
「普通に美味しいから一回おやつ感覚で食べてみたら〜? イチオシは〜......これかな!」
友利は二人を見ていて、眩しいと感じてしまう。
最近は近くにいたので分からなかったがやはり瑞樹も陽キャラの中のさらに中心。
瑞樹はレジに向かったが、その後ろを並ぶことはできなかった。
レジ付近前のコーナーでしゃべっている二人に近づくことができなかったのだ。
なので買うはずもないお菓子コーナーに行って瑞樹がアイスを買うのを待つことにした。
「お買い上げありがとうございました」
店員のそう言った声が聞こえると「じゃあ天音、外で待っているね」という声が聞こえてくる。
瑞樹がレジで買い終わったらしい。
そろそろレジに行って買いに行こうとアイスだけ持ってレジに向かおうとした時だった。
天音が前から歩いてきた。
お菓子を買うのだろうかと友利は狭いので横に避けた。
しかし天音は友利の目の前で止まった。
「皆原くん......だっけ?」
「そうだよ、皆原 友利です」
「クラスメイトだけどこうして話すの初めてだよね。天音です......瑞樹と仲良くしてるからどんな子なのかなあって思って話してみたくてさ」
天音はそう言って笑う。
しかし瑞樹と話している時の笑いではなくどこか作った笑顔だった。
雰囲気も大きく違っていた。
「もういっか......単刀直入だけど皆原くんなんだよね。瑞樹に嘘告したの」
そして突然、天音はそんなことを言い出した。
「そう......だね」と友利はバツが悪く、それだけしか言えなかった。
天音はそのまま言葉を続けた。
「そういうのもう絶対やらないで。本人笑ってるけど嘘告なんて酷いよ......できればもう瑞樹に近づかないでほしい」
何も言い返す言葉が見当たらず「じゃあね」と去る天音の背中をただ見ることしかできなかった。
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