第八話 幼馴染と変化

「友利と早坂さん、最近仲が良いよな。どういう経緯で仲良くなったんだ?」


 休み時間、悠里と会話をしているとそんなことを悠里が言う。

 

 表情は普通で単なる疑問のようだ。

 たしかに性格も似ているわけではないしそもそもの接点がない。

 それなのにも関わらず仲良くしていることが不思議だったのだろう。

 

 経緯を答えるかどうか迷ったが悠里にならと言うことにした。


「浩也たちに絡まれて......」

「また浩也絡みか、それで?」

「嘘告させられて」

「はあ? ......あいつらまじかよ」

「それで振られたけど何か仲良くなった」

「ちょっと待て、全く意味がわからん......なんで振られたのに仲良くしてるんだよ」

「友達から? みたいな?」

「理解が難しいが......なるほど」


 悠里は顔をしかめて首を傾けながらうなずく。

 

 正直、性格も違うし、なぜ仲良くできているのかわからない。

 しかし本人が友人を作りやすい性格をしているというのはあると思うが瑞樹とはなんとなく話しやすい。

 大胆な部分もあって振り回される時もあるがそれも含めて一緒にいて楽しい。


「特に理由はないけど波長があって話しやすい人っているだろ?」

「言われてみるとたしかにな、会話のテンポとか、喋り方とかが自分とあってて話しやすいみたいなものはあるな」

「そういうこと、きっかけは嘘告だったけど仲良くなったのはそういうのが理由なんだろうね」


 悠里は顔の表情を戻して「なるほど」とだけ呟いた。

 

 瑞樹と遊んだ後、瑞樹との仲はさらに深まった気がする。

「もうすぐバスケの大会があるから朝練と昼練頑張らなくちゃ」ということで昼休みは一緒にいない。

 しかし休み時間は話すし、放課後も瑞樹が部活がない日は一緒に帰るようになった。


 友利はふと瑞樹の方を見た。

 すると、天音と瑞樹が向かい合って座っており、その横に浩也たちが立って瑞樹たちと話していた。

 何を話しているかはわからない。

 

 浩也の方をジッと見ていると瑞樹と話している様子だったがチラチラと天音の方を見ていることに気づいた。


 (瑞樹の言う通り、天音が好きなのか)


「ん、どうした?」

「ううん、何でもない。浩也たちがあの二人に絡んでるなって」

「嫉妬か?」

「流石に違う」


 そしてしばらく様子をボーッと見ていると浩也と目が合ってしまった。

 友利はすぐに目を元に戻して、悠里の方を見る。

 今までの経験上、絡まれてしまうと考えたからだ。

 

 不運なことにその直感は当たってしまった。


「友利、またゲームしようぜ」


 友利が悠里と話しているというのに浩也はいきなり友利の首に腕を回してくる。

 そしてゲームに参加するように呼びかけた。

 呼びかけてはいるがほぼ強制だ。


「僕はもうやりたくない」

「なんだよ、告白失敗して萎えたのか? でもお前に拒否権ないから」


 浩也はそう言って強引に席から離そうとする。

 しかし悠里がそれを止めようと浩也の腕を掴んだ。


「は? なに?」

「嫌がってるだろ、そういうのやめたほうがいいぞ」

「大丈夫、大丈夫、友利は嫌がってなんかないから。な? 友利?」


 浩也にそう言われて友利は圧をかけられる。

 

 今までであれば穏便に済ませたかったし、浩也の機嫌を取って今の立場から悪化させたくなかった。

 

 しかしその考えが幼稚だと最近になって気づいた。

 今までのままでは何も変わらない上に他人を傷つけてしまう可能性が出てくる。

 友利が恥をかけばいいだけだったのでよかったが浩也の行動はエスカレートして行っている。


「嫌だし、どうせ僕をはめる気だろ? もうやめてくれよ」


 だから浩也との関係を終わらせることにした。

 

 何か言われるかもしれないし、やられるかもしれない。

 けれど簡単なことだ、無視してしまえばいい。

 どうして今まで気づかなかったのだろうか。


「どうせ優越感に浸りたいだけだろ? 何をしなくてもクラスのカースト的にはお前が上で僕が下。もう僕に関わらないでくれ」


 友利はそう言って席を立った。

 そして悠里に「一緒にトイレ行こ」と言って二人で教室を後にした。

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