第14話 嵐の前の静けさ
2024年10月8日 火曜日。宣告された死まで残り27日。
匂坂社長と伊熊部長は例によって外食に
社屋内では未使用の会議室を食事スペースとして開放しているが、基本的に座席はオサカベコーポレーションの従業員で埋まっており、
それでも今日に関しては、午前中に伊熊部長から聞かされた話題が一翔の脳内で
『豊橋の長澤君をね、ここに戻すかもしれないって話になってだな。彼にどういう仕事をさせるかは
それは、
そうした
直接の親会社である
——現場でも散々な評価だったあの人がこの狭い事務所に戻って来るとか、想像しただけで嫌すぎる。…まぁ、それを
現在
不動産業を始め知識が豊富で計算高く代表からの評価は高かったが、がさつで融通が
そこで
長澤副支配人の貢献によって業績が改善された側面はあったものの、現場の不満が
——業務の指示をやるだけやってフォローがない、意見を出しても門前払いにされる、顧客とのトラブルを解消してくれない、支配人に直接話を通そうとすると
一翔も長澤次長絡みでは、苦々しい経験があった。本来3年予定だった現場出向を前倒しで解除し、本社に戻された一翔には次長から
そのうちの1つは、当時現場で導入に消極的だったSNSアカウントを全ゴルフ場に作らせ、活用させるものであった。
今となっては
そして最も難題であったのは、
概要としては各地で予選を行ったのち、選抜者を1ゴルフ場に集めて決勝戦を実施するものであり、業界大手では
だがそれは相応の人手を
一方的かつ冗長に指示を伝えた長澤次長からは、最後にこんな助言が添えられた。
『何かあったらサポートするからさ。現場の支配人に仕事回してやってよ』
だが間もなくして訪れた世界的な
そして
その平穏に、窓の外で
——長澤さんが戻ってきたら、また以前のような無謀な大会企画を掘り返されるんだろうか。経理業務とか、俺の数少ない仕事の大半はあの人から引き継いだものだし、それが取り上げられたりするんだろうか。
——でも俺がもし1ヶ月後に命を奪われてしまうとしたら…そんな心配はするだけ無用なんだろうか。
長澤次長との仕事と
あの人と仕事をするくらいなら死んだ方がマシだ——などという
そんな感傷に浸っていると
一翔は
午後の勤務時間となり伊熊部長が戻って来たが、その際に匂坂社長がまた私用で出払ったまま
匂坂社長は長澤次長の件に関しても、伊熊部長に現場対応を任せつつ
——代表にとって長澤さんは、知人から預って世話をしたようなものだった。だからどんなに悪目立ちしても、ぞんざいな処遇をすることはないのだろう。
——それなら
適当なパソコン作業で午後も時間を
発信元は都内で働いているはずの母からであり、一翔はこの時点で何か不穏な予感を察知していた。
「もしもし一翔? お仕事中にごめんね。今、話しても大丈夫?」
久方ぶりに聞いた母・
「あのね、さっき病院から連絡があって…お
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