第8話 魔が差したんだと思う
18時頃に始まった飲み会は20時前には切り上げられ、遠方から集まっていたタカとシュンは真っ
元より遊び歩くような
一翔も
そこから更に徒歩で10分ほどを要する帰路は、人も自動車も夜間は
上空は雲に
「飲み会、あんまり楽しくなかったの?」
不意に右側から話しかけられ、一翔は並ぶように歩きながら顔を
『天使』は自分よりもずっと薄着で肌の露出が多いにも
最も人間らしからぬそのパーツの性質は依然として不可解なままであったが、一翔にとっては彼女の存在そのものが奇妙であることに変わりなく、言及する優先順位のリスト外であった。
一翔は外出中に話し掛けるなという要請を
「…あんたが料理を横取りしたからだろ。それで俺が挙動不審な反応をして…変な雰囲気になったんじゃねぇか」
「そう? 別にお友達の2人は気にしてる様子なかったけど」
「そう見えなくとも絶対
一翔は濡れ
だが『天使』は何ら
「ほら、君は基本毎晩自炊してるけど、揚げ物は作らないでしょう?」
「…は? なんだよそれ。答えになってねぇんだけど」
「そうじゃなくて。私が手を出さなくとも、君はそのまま唐揚げを独占していただろうってこと。君は料理が残されることだけでなく、放置されて冷めてしまうことも嫌うでしょう。それに居酒屋での食事は、普段の自炊と比べたらコストパフォーマンスに見合わない。その上で食べる機会の少ない揚げ物が放置され冷めかけていたのなら、君は遠慮せず食欲を満たそうと独占していたんじゃないのかな」
まるでAIが過去の自分の言動を総合して導き出したかのような
確かに『天使』が指摘するような趣向は否定
「だからさぁ、何であんたが唐揚げを食べたのかって
一翔は正面を向いたまま、吐き捨てるようにして『天使』への追及を続けた。
だが彼女はやはり何か本音を隠していたのか、そこから返事が戻って来るまでには数秒の沈黙があった。
「そうだね、ごめん。君が会話から漏れて楽しくなさそうだったから…魔が差したんだと思う」
その釈明を受けて、一翔は飲み会のテーブルに生じていた温度差を『天使』に正面から看破されていたことを
——『天使』のくせに魔が差したとか、
——いや、あいつは過去同じようなシチュエーションで、何度も同じような俺の顔色を見てきたってことなのか。それで俺が認識
それでも好意的に捉え直す気など
「…余計なことしなくていいんだよ」
「でも、そうでなくとも君はお友達に何も相談しようとしなかったじゃない。あと29日で神様に命を奪われてしまうかもしれないのに…せっかく久々に集まれて、腹を割って話せる機会だったんじゃないの?」
やはりそうか、と一翔はその追及を心の中で
仮にタカとシュンに対して自分の身に降り掛かったことをありのまま打ち明けたとしても、冗談半分に信じるか
『天使』もその
——それでも…いや、だからこそ…相談なんて
「…もう一度言う。余計なことはしなくていい。俺がどう生きるかは……俺が決める」
一翔は先程よりも
それが今日一番の
「そう、
だが『天使』はそれ以上に言い寄ることはせず、けじめを付けるかのように静かに答えた。
その言い方は
一翔はかえって突き放されたような
とはいえ彼女との会話自体を拒絶したわけではなく、明日からまた始まる1週間のなかで何も接触がないことは期待し
——いつまでも
——そもそも1か月後に死ぬかもしれないっていう危機感すら俺は半信半疑で、
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