第6話 珍しいね
「それじゃあ、ユーヤンの第1
10月6日の日曜日、その日の夜は学生時代の友人であるユーヤンこと古賀
とはいってもユーヤン本人は当然ながら出席しておらず、同じグループメンバーの高島
「いやー、久々だなぁこうして集まるのは。シュンもカズトもユーヤンの結婚式以来だよな?」
今回の飲み会の
それに対してシュンこと森駿介が、苦笑を浮かべながら
「まぁ、そもそも俺ら簡単に集まれる距離じゃないだろ」
「確かにな。良い機会をくれたユーヤンに感謝しねぇと。あ、あいつビデオ通話なら少しでも時間作ってくれるかな」
「いや、そういうのは事前に
一翔もまたジョッキを片手に突っ込みながら、上機嫌な雰囲気に
都内の大学で同じクラスになり、入学オリエンテーションの際に
タカは静岡市で金融機関、シュンは名古屋市で大手メーカーに勤めており、どちらも都内の本社から地方へ配属
ユーヤンは横浜市の地元で公務員を務めており、数年前に同市内で
それ以来となる再会は、昔から口数の多いタカを中心に会話が弾んでいた。
店内の隅に位置する4人掛けのテーブルにシュンが
『天使』の姿は見当たらなかった。だが必ずどこかに
「おはよう」
その日の朝、一翔が
まるで室内照明を落としたと同時に機能を停止したロボットであるかのように、彼女の姿勢は
他方で昨日と違ってベランダ側のカーテンは陽光を
朝から目に毒だと思った一翔は
だがその背中に向かって、『天使』は変わらない調子で問いかけてきた。
「どう? 一晩経って、これからどうしたいか考えた?」
一夜が明けても消えない幻覚を
それでも一翔には
「別に何も。昨日の今日で何をしたいかなんて浮かばないから」
「じゃあ、今日は1日何するの?」
「今日は…夜に友達と飲み会がある」
「そうなんだ。珍しいね」
だがその一方で、
「…もしかして、あんたも付いて来るってことなのか」
「付いて来るも何も、私はそういう存在だからね。君が動けば私も動く。あ、
「原則…って、例外的に見える人もいるってことなのかよ」
「そうだね。君と同じように神様からの宣告を受けた経験がある人間には、私のことが見えるかもしれないね」
『天使』の
「…
「今まで実際に
その
だが『天使』がどのような存在であろうと——
「だから、そういう経験者を探して宛にしようとする方針は推奨しないかな。やっぱりこれは、宣告を受けた人間自身の問題だからね」
だが『天使』は一翔に芽生えた
「…とにかく、外にいる時は話しかけて来るなよ。周囲に見えない存在と
そうして日中はまた特に何をするでもなく時間が過ぎ去り、夕方にはローカル鉄道に乗って浜松駅へと
視界に映らない時間が長引けば、それだけ彼女の存在は頭の片隅へと追い
だが彼女は確かに自分の周囲に存在していて、外へ出れば誰かの目に
また見方を変えれば、彼女を引き連れている自分が今まさに余命宣告を受けている
そのような不安を抱えながら、旧友との再会では酒の力も借りつつ機嫌を取り
「だからその顧客対応がマジで大変でさぁ、後輩を育てながらってのが何つーか…後輩も顧客に見えて来るときがあってさぁ…」
「そんなに悩むもんか? 俺は逆に上司や年寄りに
だが一翔はタカとシュンの他愛のない会話を聞いている限りでは、少なくとも2人に対してそれが
有名企業にすんなりと就職し、
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