第3話 伝書鳩の幻
ローテーブルの
透き通ったマリンブルーの瞳に吸い込まれそうで、彼女が
この幻覚と幻聴を
——仕方がない、適当に
『天使』は自分に余命宣告をするために現れた——それを自分が信用していないから彼女は役割を
「
溜息混じりに右手を払い、
彼女の言う30日という期限に対して回避する条件が付されている以上、彼女はその手段も含めた伝達役を
「ん?『価値のある人間』になればいいって言ったよね?」
だが一方の『天使』は表情を変えることなく、端的に抽象的な言い回しを繰り返すのみであった。
「いや、だからその『価値のある人間』ってのが具体的に何なのかって話だよ」
「それは君が決めることだよ。君自身の何を、誰に対して認めてもらうかってことだと思うな」
「あんたは神様からの宣告を伝える役を
「それは神様が決めることであって、私が何か君を審査するわけじゃないよ」
『天の
他方でそこまで考えたとき、無視
「なぁ、神様って一体どの神様なんだよ。天使が出て来るってことは、キリスト教で言う神を指してるのか?」
一翔の母方の祖父母はクリスチャンであり、幼い頃に訪ねた際は教会に連れられた経験が何度かあった。だからといってキリスト教の
それ
「さぁ。そうかもしれないし、そうでないかもしれない。神様の定義自体、時代や土地によって様々だし…」
「そういうことじゃなくてさ…あんたを俺に派遣した神様ってのはどういう奴なんだよ?」
一翔は『天使』との噛み合わない応対を
「そんなことを
「なんだよそれ。あんたは神様からの
「うーん、そういう見方も
その
——駄目だ、
漠然とした存在が『天使』という不可思議な存在を経由して、自分に対して無価値な人間という
表面上でも宣告に従う
——やっぱり幻覚や幻聴の
「どうしたの? 具合でも悪い?」
柔らかく
長く
だが
「別に。あんたに気を
「どうして? それくらい誰だって普通のことでしょう?」
「あんたが普通を語るのかよ。神様から無価値の
一翔が粗雑に言い放つと、『天使』は押し黙ったのか室内に沈黙が降り掛かった。
その
だが間もなくして、『天使』がそっと
「さっきも言ったよね。君に余命を宣告したのは、あくまで例外の役割だって。本来は君を見守り続けることが、私の存在意義なの」
「だからそんなの知らないし、頼んでないし…俺がどうしたって、あんたには関係ないだろ」
「関係あるよ。君が死んだら、私もこの世から消えてしまうから。だから君には…少しでも
その言葉に一翔は自然と振り返っていたが、『天使』の姿は
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