第2話 夢か現か
『天使』が非情な宣告を言い放つ
だが一翔は実際に告げられた言葉を、その
——ああ、そうか。これは
『天使』から繰り出される奇妙な
スマホで赤子の写真を見てから
それならば大きすぎる翼を背負った美しい女性が独身男性の
だが、それはそれで
——夢を見ているなら、いい加減覚まさないとな。
一翔は首を振りながら1つ溜息を付くと、立ち上がって
そして『天使』の姿をなるべく見ないように——大きな翼を避けるようにして洗面台へと向かった。
洗顔で表皮がさっぱりしても脳内まで冷めたわけではなく、洗面台の鏡から視線を
目を
その後は洗濯機を回しながら部屋の掃除をするのが、休日である土曜の一翔のルーティンであった。
玄関脇の棚に収納しているハンディモップを取り出す際、玄関扉を
モップをはためかせながら意を決して居間に戻ると、『天使』の姿はなく、床には画面が暗転したスマホが静かに横たわっていた。
——ほらな、やっぱり夢だったじゃないか。
アパートの1階であるとはいえ、何の痕跡もなく出入りが
一翔は改めて
洗濯物を外干しすべきか考えていると、視界の先の一軒家から幼い男の子と若い夫婦が出て来て、自動車に乗り込んでどこかへと出掛けて行った。
天候などまるで関係ない、
だがその光景を見聞きする度に、自分が当然に持っていないものを誇張されるような錯覚に
——ああいうのが、人間として正しい在り方なんだよな。
——
いつにも増して
身近な存在から正しい在り方を突き付けられれば、
その汚い染みを上塗りするほど人生で夢中になれるものがあれば良いのだが、一翔はそれすら持ち合わせていなかった。
平日は何となく仕事を片付けて、休日は
『30日以内に君が『価値のある人間』になれなければ…君は神様に命を奪われることになる。』
すると、
自分は無価値な人間だというレッテルは、特段真新しいものではなかった。
——自分自身に対する
一翔は再び
時刻は11時近くなり、こうなると朝食はとらずブランチにしてしまうのが毎度のことであった。
それでもマグカップに放ったインスタントコーヒーに氷と水を混ぜ、ブラックのまま一息つくところまでがルーティンであった。
一翔はテレビの前にローテーブルと座椅子を移動させて座り、アイスコーヒーを
「何観るの?」
だがリモコンを向けた先には先程の『天使』が、一翔に対面する格好でローテーブルに肘を付いていた。
一翔は音もなく
鼻の奥から肺にかけて不快な冷たさに満たされながら、
「おまえ……なんで、そこに……。」
「ああ、ごめん。ここじゃテレビ見えないよね。」
「そうじゃねぇよ! おまえ一体どこに隠れて…いや、さっきから一体何のつもりなんだよ!?」
呼吸を整えながら取り留めのない問いを荒々しく投げつける一翔に対し、『天使』は澄ました顔で答えた。
「別にどこにも隠れてないよ。君が掃除に夢中で私が見えていなかっただけ。でも一度私が見えてしまった以上、私が伝えたことは何も変わらない。それでも
ろくでなしと笑わない天使 吉高 樽 @YoshidakaTaru139
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