Day18 祭り

「いいなぁ……」

「ん? 何?」

 三崎くんがきょとんとした顔で尋ねる。頭の中に浮かんだ言葉がつい口に出てしまったと知って、恥ずかしくなった。

「ごめん、何でもない。でも言われてみれば、確かに何か引っかかるような感じはあるんだよね……何だろう」

 うつむいて考え込んでいるわたしに、三崎くんが言った。

「ちょっと、ここはけた後に二人で話さない?」

 わたしはうなずいた。三崎くんの彼女に悪いだろうかという思いが、一瞬だけ頭の中に浮かんで消えた。だって、浮気なんかするはずがない。ただ首の話をするに決まっていた。


 二次会に向かう面々と別れて、三崎くんと二人で歩いた。オケの人たちとうっかり合流しないように裏道を通って、小さなバーに入った。

 薄暗い店内に聞き覚えのある曲が流れている。「カルナヴァルの朝」だなと思ったとき、三崎くんも同じ曲名を思い出したらしい。「そういえば森下さぁ、祭りの日に生首を見たって話、昔してたよ」と切り出した。

「そうなの? 聞いてない」

「あいつ、何度かおれの部屋に泊まりに来たことがあってさぁ。だからあいつが話し始めたとき、えっ祭りの話じゃないんだって驚いたよ」

「そうなんだ。じゃあ、あのお屋敷の話って作り話かな?」

「いや、あれはあれで本物な気がする……あいつの親戚に聞いた話かどうかとかはわかんないけど、少なくとも本当にあったことじゃないかって――だって、落ちてきてたじゃん。あいつの話の後、屋根にどんどんどんって、何かが落ちてきたよね?」

 それが実話である証明なのだと、三崎くんは言いたいらしい。なるほど、と返してハイボールをすすっていると、「それにさ」とまた続けた。

「おれの彼女が言ったんだよ、あの話は本物だって」

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