Day13 祭り

 その日、さきこさんをボストンバッグに入れて、一緒に出かけた。

 さきこさんは出かけるのが好きだ。妹さんと住んでいた頃も、よく同じようにして外出したらしい。

「外の匂いがする」

 バッグの口をほんの少し開けてみると、さきこさんは嬉しそうにそう言った。

 大きな神社の境内で、お祭りが催されていた。食べ物の屋台がたくさん出て、老若男女で賑わっている。今回のお目当ては、それと併設された骨董市だった。こちらも出店が多く、青空の下にテントがいくつも並んで、祭りらしくにぎやかな雰囲気だった。

「ライトを探しに来たの。『カメリア』の離れとおそろいになるような」

 さきこさんは「素敵」と言ってくれた。

 出店の中には電灯の笠を扱っているところもあり、私はそれらをくまなくチェックしていった。雰囲気が似ているものもあるが、おそろいというほどではない。まったく同じとは言わないまでも、もう少し寄せたものが欲しい。

「あら」

 ある店の前を通りかかったとき、さきこさんが声をあげた。

「どうしたの、さきこさん」

 小声で話しかけると、「このお店、なんとなく気になるの」と返事があった。

 私は店の出物を物色した。店主は男性のようだが、帽子を深くかぶり、シャツの襟を立てていて、人相はよくわからない。わからないが、さきこさんが入ったバッグを見られているような気がする。

(気味の悪いひと)

 そう思いながらも品物を見ていくと、ふと目を引くものがあった。

 ランプシェードだ。『カメリア』の離れにスタンドライトはなかったが、天井から下がっていたライトの笠と、このランプシェードとは、配色といい形といい、よく似ているように思えた。

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