Day04 館
そのとき、部屋中にドンという音が響いた。
ある程度の重さのものが降ってきて、屋根にぶつかって音をたてた――というような音だと思った。ガヤガヤとにぎやかだった室内が突然静まり返り、皆が天井を見上げた。
やっぱり皆、上から音がした、と思ったのだろう。
「……何か屋根に落ちたんすかね」
三崎くんが呟いた。
「何が? どこから?」
まゆか先輩が、なぜか少し怒ったような口調で尋ねた。
「そういう家があるんですよ」
また一本チューハイ缶を空けた森下くんが、突然口を挟んできた。
「そういう家?」
「何かが屋根に落ちてくる家です」
森下くんはそう言いながら紙コップをひとつ取り、日本酒を注いだ。
「そこは戦前からあるっていう大きな家で、住んでるのも代々お金持ちみたいな、会社経営してる一族なんですけど、そのお屋敷の屋根に、時々何かがドンッて落ちてくるらしいんですよ。落ちてくる位置はランダムらしいけど、真下の部屋に人がいる場合が多いって聞いた」
「へーっ」三崎くんはなぜか興味津々だ。「森下、それマジの話? 誰かから聞いたんか?」
「うちの伯母から――ずっと仕事で家政婦してるひとなんで」
森下くんはそう答えて、話を続けた。「何か落ちてきたと思って外に出ても、何もないんだって。そしたらお屋敷の人に、その音は気にしなくていいって言われたって。で、その伯母が『あれは生首だ』って言うんですよ。生首が降ってくるんだって」
「生首!?」三崎くんが大きな声を出したので、周囲の皆がこっちを向いた。「なんだよ~! お前も生首の話持ってんじゃん! いや~、案外色んなとこに出てくるんだなぁ、生首って」
嬉しそうにそう言いながら、森下くんの背中を叩く。森下くんは「やめろよ、酒が零れるだろ」と、座ったままで三崎くんを避ける。
「ごめんごめん。で、どうなの? 生首は。どういう見た目? 男? 女? 若い? 年寄り?」
三崎くんはずいぶん前のめりだ。どうしてそんなことを聞くんだろう。いつの間にかまゆか先輩も、目を輝かせてこちらを見つめている。
「色々だって」
森下くんは答える。「老若男女、日によっていろんな生首が落ちてくるんだって。その家の娘の結婚式の日なんか、ドンドンドンッて、一気に三個くらい落ちてきたのが、天窓の向こうに見えたって」
その家は異様に天窓が多いらしい、と付け加えて、森下くんは口を閉じた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます