第106話 煙と印
ムラサメはク海を滑るように進む。
だからこそ、この
雨の降りしきる戦場で、
砕かれ、首無しで立ち上がり、時には仲間の
どこにそんな気力があるのだろうか? なぜ、朽ち果てた後にまでそこまでしてくれるのだ?
彼らには、国を守るというのは、家族を守るというのはこういうことなのだろうか?
自分を
彼らはそういう想いを共有した集団だった。
その先頭で、黒き鎧に銃を背負い槍を手にアダケモノに飛び掛かる少年。ユウジ
彼のその心に恐れはなかった。後ろを守る五百の魂。生きた時代は違うが、その想いは肌をピリピリとさせる。
思わず槍を握る手に力が入った。
俺のところに来い!相手をしてやる。
ー
「前方にアダケモノ多数!停止中」
メルの勧告に
下向きの三角表示が仇花を中心に円を描くように配置されているのが確認できる。
ちょうど25km付近か。
「シロちゃん、これ触発機雷だよ。フグだぁ。珍しぃー!」
ユーグの声には喜色があった。どうかとは思うが、明るい調子だから良い。
しかし、この配置は・・・。
「地表から30mで均一に配置されています。」
ユーグがメルの声を
「これ、振動と感情波の両方を感知するって考えた方がいい。配置のされ方、効果から見て、感知距離30m!そこまで近づいたら爆発するよ!」
「サヤ、飛び越えるぞ!」
「わかった!」
「現進路、速力で接敵まで3分!上げ舵5度、高度約200mで飛び越えます!」
「メル、それでいい。サヤ、頼む!」
翼はムラサメの高度を押し上げはじめた。地面が離れていく。
「アダケモノ、
チエノスケの蜂が見た丸々とした白い物体を拡大する。蜂達は10匹に分かれ、ムラサメの前部、後部、左右、艦底に張り付き各部映像を送ってくる。また常に2匹、ムラサメの前方を警戒飛行している。これはその警戒飛行からの報告だ。
その映像から嫌なものを感じるシロウ。
ーバッチリ、こっちを見てやがるー
ー先に
その時だった。
「フグのアダケモノ、爆発!」
画面を監視していたマチルダが叫ぶ。
紫色をした爆風がムラサメを包む。モモが
ムラサメはアダケモノの爆発した紫色の煙をかいくぐり機雷網を抜け出ることができた。
「何だったんだ?暴発か?」グンカイが太い首をかしげる。
ーいや、違うー
シロウは画面越しに見たあのアダケモノの目を思うと引っかかる。
ムラサメが突然揺れた!
「アダケモノの大群です!突っ込んできます!」
「モモ!
モモの瞳が即座に光る。
「急速潜航!川面まで降りる!」
「何で急に襲ってきたと?」
ー
あの紫色の煙は多分、こちらを識別するためのもの、理屈は分からないが、目立つ絵具を引っ掛けられたようなものだろう。
それと、もし、
自分の周りを円で取り囲ませた手下。そのひとつの生存反応が消え、そいつが身を挺してつけた印が飛んでくる。優先的に対処する目標と判断するだろう。
「他のフグ、消えます!」
ー俺達の存在がばれたー
ムラサメが
「ユウジを呼び返せ!直行で花を叩く!」
シロウは席から立ちあがって叫んでいた。
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