第80話 飯と眠り

成馬宮なるまみや城 郊外


 ク海潜水艇ムラサメ 艦内


 顔ぶれはこのようだった。


 かさね シロウ  勇那国いさなのくに 勇那守いさなのかみの四男,紋章 海星の涙ステラマリス


 諸岩もろいわグンカイ  勇那国いさなのくに 国家老、宝 月の荒鷲アーノルド


 おきチエノスケ  勇那国いさなのくに 家臣、宝 槍帝の孚ジェラルド


 片城かたきユウジロウ  勇那国いさなのくに 家臣、宝 萃の微風ラウラ


 サヤ  自称勇那国いさなのくに 獅子谷村ししやむらの住人、宝 紅玉の瞳マチルダ賽の白露メルセデス


 ここまで五名は人間。以下は宝の化身等。


 ステラ  紋章 海星の涙ステラマリスの化身。右の龍姫。青い服の右目が赤い少女。


 マリス  紋章 海星の涙ステラマリスの化身。左の龍姫。青い服の左目が赤い少女。


 魂座ごんざ現八げんぱち  勇那国 いさなのくに天巫女あまみこ城主 黒き鎧と槍の化身。ユウジロウの大叔父であり臣下。


 魂座ごんざ璃多りた  勇那国いさなのくに 天巫女あまみこ城の姫 銃の化身。現八げんぱちの娘。瑠璃るり色の髪の美女。


 マチルダ  宝 紅玉の瞳マチルダの化身。異国の軍服を着た紅い短髪の美女。


 メルセデス  宝 賽の白露メルセデスの化身。異国の藤色の服に銀の軽鎧を着た紫色の髪の美女。


 ユーグ  宝 観の星王ユーグの化身。異国の服を着た眼鏡に緑色の髪の美少年。


 アーノルドは鷲の姿でグンカイの肩に乗っており、ジェラルドは姿を見せない。


 そして、


 露嶽丸つわたけまる  ク海潜航艇ムラサメを起動させる宝鍵(剣)。その自立型主機構メイシステム。 


 モモ  不思議な亀。宝 六芒星の盾狼ランドルフ


 明丸  幼児、虎成とらなり城の奥で匿われていた。



 ク海潜水艇ムラサメは無事、着底した。


 月が輝く夜半、一周回って元の虎成城と成馬宮を直線で結ぶ点、そう大ムカデの補給地の近くまで面舵で回り込んでようやく着地した。


 一同は艦橋かんきょう、つまりは艦を指揮する場所に集まり顔を合わせたところだ。


「皆、我はこの勇那国いさなのくにを治める重家かさねけの四男、シロウだ。少々話がしたい。いいかな?」シロウは切り出した。


「その前に食事を取られることをお勧めします。戦闘食ですが飲み物と一緒に用意があります。」

 露嶽丸つわたけまるの提案。


「そいつはありがたい!」

 そういうと同時に、ユウジの腹が盛大に鳴る。艦橋かんきょうが笑いに包まれた。


チエノスケがぶっきらぼうに言う。

「だらしのない奴だ。幽霊とか偽物ではないみたいだな。」

「沖、心配してくれたのか?」

「バカか!それは婆様に言うのだな。心配しておったぞ。この親不幸者めが。」

 口が悪いが、コイツにしては口が回るものだとユウジは思った。

「して、婆様は無事か?」

「ユウジ、それらについては話すことがたくさんある。」

 若の言葉にユウジは不安なものを感じた。


 それから、食事を取りながら、お互いがどうやって生き延び、何を見て何をしてきたかを話した。


 ユウジにとって、とても信じられない話が続いた。


 シロウにとっても、ク海の真実に近づく情報が入ってきた。


 他の面々もお互いの関係性を知り、思う所がたくさんあったようだ。


 それぞれが想いを整理するには時間が必要だろう。せめて一晩くらいは眠りたい。


「私が見張りをいたします。皆さまごゆっくりとお休みください。」

 露嶽丸つわたけまるが見張りをしてくれるらしい。


「我らの耳もある。生身の者は特に休め。」

 ステラとマリスが耳当てをして、それをコツコツと叩いて胸を張っている。


 こりゃぁ、蟻のアダケモノが来ても聞き分けられるわ。寝かせてもらおう。シロウは思う。


 すべては明るくなって再開だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る