第38話 若と荒鷲
黄色く光る閃光が敵の群れに
それは、時に貫き、時に散らばり、また集う。
仕組まれた本能だしても、彼らにはそれが全て。
愛しき人達が傷つかぬよう、その身を挺していく。
後先など、露ほども考えずに。
仲間が落とされよう構わない。
それをしり目に、主人とともに刺すのが本分だ。
沖の
しかし、多勢に
シロウをはじめ、城兵たちは果敢に切り結ぶ。
しかし、いったい何時どこに、敵のいない景色が広がるのか?
シロウは、つなぎにと思って両の肩に括りつけていた刀を抜こうとした。
もうすでに、握っている刀は刃こぼれして突くしかできなかったからだ。
しかし、肩にはもう、手に取るべき刀は残っていない。
ーギャオウー
迫りくるオオトカゲのアダケモノの背に最後の刀で地面に
そのふもとから、もうもうと
あの大イノシシはお祖父様達に届いてしまったのではないか?
我はどうしてこう無力なのだ。そう・・思った。
ここも落ちるのか?六年前の
思えばあの時と同じ気持ちだ。斬っても斬っても迫りくる
十五のあの夜も、血まみれで刀を振るった。
ナツキを背に守り、十にもみたないユウジの手を引いて逃れて、逃れて。
我はあの頃と何も変わらぬのか?
「いいや、ちょっとお兄さんになったのじゃ。」
ぽそっとつぶやいた。
そして
「アハハハハハハハハハァァァ!」
シロウは敵の中で大笑いした。
苦しい時ほど、言の葉は明るくつむげ!
脳みそが
我はできる、そう確信させよ。
我の他にだれがこの城を救える?今こそそう思いあがれ!
何度も何度も口に出して、己の機嫌を上げていくのだ。
「さぁ、虎河の
倒れた敵兵から刀を奪うと大声をあげ敵を一手に引き受ける。
ーガキッンー
すんでのところで、シロウはその刃を防いだ。
変則的に左右から斬撃が襲ってくる。
なんと言う
「
その猿のアダケモノの両腕は刀のように作られていた。
勢いよく飛び、その斬撃で命を狙ってくるのだ。
四匹はいる。壁を乗り越えて入ってきたか。
これは敵が減らぬはずだ。
「
左から来る。
もう折れそうな刀を目いっぱい突く。
瞬間、猿は口から串刺しになった。
即座に転げて、落ちている刀をかすめる様に拾う。
我もユウジのことは言えぬ。
普通の刀でアダケモノと渡り合っておるわ。シロウは大笑いした。
さて、来るかね。・・・シロウは構えた。
手前の猿が低くかがみ、飛び出そうとした瞬間。
ーバシュー ーバシュバシュー
三本の矢が猿のアダケモノを背中から射抜いた。
「若!遅くなりましたな!」
城門の上で人影が動く。
家老の
「まぁた泣きべそでも掻いておるのかと思っておりましたぞ。」
白髪と一言多いこの男は、もう五十を半ばまできているはずだ。
そして、シロウのかつての
「ワシがここを引き受けまする。大殿が心配じゃ。行って差し上げてくだされ。」
そういって、城門から飛び降りると見事な速射で敵を射止めていく。
「グンカイ!無茶をするなよ!」
「ハッハア!この
そうだった。この男は祖父と父の元、多くのアダケモノを退けてきた強者だ。
「ワシの気力が萎えんうちはなぁ。怒りを込めていくらでもくれてやるわ!」
いらん世話だな、このジジイには。
「さぁ、お行きなされ。」
シロウとグンカイは目が合った。
シロウの口元は上がっていた。
それを見るとグンカイはクルリと背を向けた。
シロウは無言で天守へ駆ける。
それでよい。グンカイは思っていた。
小さい頃から、出来の良く優しい兄上達にかまってもらって育てられた、気のいい
今もへっぴり腰で
グンカイは神業のような連射で敵を仕留めていく。
あの大イノシシ、ワシの矢でも止まらなんだ。しくじったのう・・・苦々しく思い返す。
右、左へと敵が斬りかかるより早く、しかし普通に歩きながら射殺していく。
大殿はアレを使うことじゃろうな・・・。
さすれば、もうお会いすることもあるまい・・・グンカイは覚悟を決めていた。
ただひとつ気になるのは、
アヤツの
弓を持つ手に力が入る。
グンカイは並み居る敵を全て抑えて地面に横たえていく。
そして、城門の真下まで来ると、大音量で
「我が名は、
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