第25話 大殿と客人
ユウジの婆様の話で
「お
「おう・・・、シロウか。今日はぁ、だいぶん調子が良い。」
今はシロウの父にその職を譲って隠居している。
「それは良うございました。ああ、起き上がらずとも楽にしてくださいませ。」
ここ数年、病に臥せっていたが、今日はめずらしく体を起こしていた。
「良いのだ。我の最後の仕事も終わりそうだしのう。」
祖父の意外な言葉にシロウは
「最後だなどと・・。なぜそんな。」
祖父はこのような発言をするとは思えなかったからだ。
しかし、逆に覚悟のようなものを感じ取った。
「ああ、末っ子のお前にはまだ話しておらなんだからの。」
「・・・と申されますと?」
父や兄達が知っていて、自分が知らぬことがあるのかという意味に捉えた。
「んんっ。」
少し、
「これ、
シロウは手を打ち、
「気をつけよ。今はこの城にはそなたしかおらぬ。」
一瞬、シロウの頭にはク海探索のことが浮かんだ。城を空けるのはやはり
「
「なぜ、それをご存じで?」
どうしてそれが祖父の耳に入ったのであろう?シロウは思案を巡らせた。
「失礼いたします。」
白湯を運んできたのは、ナツキだった。
そういうことか・・・シロウは理解した。
「責めるなよ。」
祖父である大殿がポツリとだが釘を刺す。そしてナツキにそこに居よと命じた。
「
そう言って大殿はゆっくりと白湯を口にした。
「年寄の言う事は聞くものじゃ。」
「はい。」
「我と婆は実は
先に爺様に
「
「はい。」
「時期が悪い。」
時期?何の時期か?
「時期・・と申されますと?」
「
客人などシロウには何の心当たりもない。
「シロウ、
「父上からは、
そういえば、詳しくは知らない。シロウは普段、奥には入れないからだ。
「二人にはな。ここ五年以上、奥で
「客人?」
客とは誰だろう。しかも五年以上。シロウにはまるで分らないことばかりだった。
「それが、末っ子の私に話していないことなのですか?」
「おぉ、大事な客人よ。」
シロウはナツキに目をやった。
ナツキの瞳はやはり曇っているが、こちらが視線を送ったことが分かるのか、ゆっくりと
「シロウよ。」
大殿はここからのことは誰にも言うなと
「そちはムミョウ丸を覚えておるか?」
「ムミョウ丸・・・。」
忘れるハズもない。六年前、そうあの事件の後に知り合った男の子。
当時十五歳のシロウはこの
理由としては、当時、この
その当時は東の大国、
しかし、結果的に
そして、その最中に、シロウを長とする一行はク海の
襲撃を受けながらの
そして
いや、結果的に置いてけぼりにしてしまった。
「あれは、若様のせいではござりませぬ。」
目は明るさがぼんやりとしか見えぬはずなのに、ナツキはシロウの表情を見てとったかのように言う。
「歳が十五を少し過ぎたばかりの
ナツキの笑顔は
なんとフラリとナツキがク海から帰ってきたのだ。
ただ、瞳の光を失い、右手には笛、左手は年の頃は四つか五つほどの男の子の手を引いていた。
それがムミョウ丸だった。
しかしムミョウ丸は突然いなくなった・・・。
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