第2話 その後


 Side:西園 朱音


 花咲くんと別れた後から、色々と考えていたけど、時間が経つにつれて後悔と羞恥、罪悪感が襲いかかってくる。


「はぁ...」


 思わずため息が出てしまう。


「何やってんだろ...私...」


 神里君に恋人ができたと知って、その後に花咲君に優しくされて、花咲君を神里君の代わりにしようとして、


「怒られるよなぁ...嫌われちゃったかなぁ...?」


 話しいている最中に、泣きそうになった私に気づいて気を使って席を立ってくれたり、


 寒い中ずっと外にいたのを気遣って温かいココアをくれたり、


 なにより、真正面から向き合ってくれた人に本当に失礼なことしちゃった。


 嫌われて当然だよね...本当に花咲君の言う通りだなぁ...


「朱音?さっきから、どうしたの?話くらい聞くわよ?」


 お母さんが聞いてくる。


「うん...」


「さっき、公園に迎えに行った時からずっとそんな感じだけど、彼...花咲君に何かされたの?」


「ちがっ!私の方が失礼なことをしちゃったの...」


 お母さんが勘違いしていたので、慌てて訂正する。


「ふふっ、分かってるわよ。花咲君の顔を見れば、そんなことはしない男の子だってね」


「もうっ...お母さん、あまりからかわないでよ」


「ごめんなさい」


 反省していない様子で謝るお母さん。でも、すぐに真面目な顔をして聞いてくる。


「朱音。一体何があったのか教えてくれる?私はあなたの味方よ」


「うん、実はね...」




 事の顛末を、お母さんに話した。すると、開口一番、


「確かに、あなたのしそうになったことは、神里君と花咲君の両方に失礼なことよね」


「うん...」


「でも、あなたはそのことを反省しているのでしょう?」


「うん...」


「なら、花咲君に謝っておきなさい。彼が怒ったのはきっと、自分が侮辱されて怒ったとかではなく、あなたのためよ。頭を冷やして、また後日話そうって言われたでしょう?」


「うん...」


「なら、彼はあなたのことを嫌っていないわよ。ただ、あなたのことが心配でってところでしょうね」


「そうかな...?」


「なら、あなたは嫌いになった人に、また後日話そうって言うかしら?」


「言わない...」


「なら、明日学校に行って謝ってきなさい」


「分かった。花咲君に謝ってくる...!」


 やっぱりお母さんには敵わないや。お母さんが何かを思い出したかのような顔をする。


「それよりも、あなたが失恋するなんてねぇ。私が言うのもなんだけど、こんなに美人なのにねぇ」


「ちょっと!失恋したばっかりの娘に普通そんなこと言うかな!?」


「ふふっ、でもある程度吹っ切れたんじゃない?誰かさんのお陰でね...!」


 お母さんが、コチラに向かってウィンクしてくる。


「んもぉ!分かってるよ!」


 私が答えるのを見てお母さんは満足そうに頷いて、何かを呟く。


「...真っ赤...これ...好きな人...すぐ...かなぁ?」


 よく聞こえなかったので、


「何か言った?」


 と聞くと、お母さんは愉快そうに答える。


「なんでもないわ。独り言よ」


「ふーん」


 本当に花咲君には感謝しないと、私だけで抱え込んでいたら、こうはいかなかっただろうなぁ。明日学校に行ったら、花咲君に謝罪と感謝を伝えないとね!


 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 Side:花咲 響


 さて、俺は西園さんと色々あった翌日、学校をバックれた。


 だって、喉を完全に痛めたし、西園さんと会うのは気まずいし...ねぇ?例え、メンタルオリハルコンの響君でも耐えられないよ。


 さらに、今日は金曜のため実質三連休なのだ!


 てなわけで、録り溜めしてた音源のMIXでもするぞー!!


 あっ、恭弥にバックれるって連絡入れとこ。






 その日学校では、西園 朱音の


「なんで、花咲君の方が学校サボってるのよぉぉぉぉぉぉ!!!」


 という叫び声が学校中に響き渡ったのであった。








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